「食事相談」が、これから動き出す。
11月25日の「食ジム」、「よい食事相談、悪い食事相談」に
参加して、食事相談の現状の一端を知ることができたのは
大いなる収穫であった。
(詳細は「スタンバイスマイル」 http://www.palmarosa.jp/)
食事相談は、通常、密室内のやりとりだから、
その方法やスキルの長短を評価したりされたりする機会がない。
職場によっては、先輩の食事相談を傍聴したり、
勉強会によってスキルアップを図ったりする例はあるだろう。
が、いろいろの職場のそれを横断的にたどる機会は少ない。
栄養士にとって、食事相談スキルは、
専門スキルのメイン中のメインのはずだが、
きわめて閉鎖的な状況が続いてきた。
門外不出の秘伝であればやむを得ないが、
実際には、先輩が自己流を押しつけ、
それを無反省に踏襲する場になりがちだった。
30年以上前に、栄養士の集まりで、
食事相談のためのマニュアル作りを提案したことがあるが、
年配の栄養士から言下に却下された。
「うちにはうちのやり方があります。
1年くらいかけて、からだで覚えてもらうしかありません」
これではワザは磨かれない。
スタンダードがなければ、それを座標軸にして
バリエーションを展開してゆくことはできない。
あるのは自己流の乱立。
それはつまり、スキルがないということにほかならない。
そういう状態で特定保健指導の仕事を引き受けた度胸は、
立派というほかはない。
知らないということは大したもので、
「怖いもの知らず」なのである。
今回、各自がいろいろの食事相談事情を公開してくれたことで、
この先の食事相談スキルのあるべき方向が
いくつも見えてきた。
その1つがトークショーとしての食事相談。
ステージ上で、著名なだれかに(著名でなくてもいいが)
食事相談的インタビューをする。
そのやりとりのおもしろさを観察してもらうのである。
雑誌などでは、著名人の献立診断を記事にすることがある。
それのステージ版である。
しかし、献立について話してもおもしろくない。
食や健康の話題を展開しつつ、
著名人と聴衆または視聴者の健康意識を高めてゆく、
という企画である。
もちろん、「指導的」スタンスでは、おもしろくもなんともない。
もっとも、これは実現を目指すというよりも、
それくらいの公開性、おもしろ味をもってほしい、
という程度の比喩である。
食事相談の今後について、もう1つ予想できるのは、
医師と栄養士との、もう少し顕著な激突、または対決だろう。
アンチエージングに代表されるように、
多くの医師は、自分の専門とは無関係に、
予防医学に触手を動かしてきている。
「何々を食べるといい」と、時代遅れの栄養学を武器に
ビジネスチャンスを広げつつある。
数年前には、栄養士を巻き込もうとした医師もいたが、
自由にコントロールできないと見て、
自分で、にわか仕込みの珍説を展開している者もいる。
医療現場では、こういう行き詰まり医師の
浅学菲才に悩まされている栄養士が少なくないことが、
今回の食ジムでの発表でもわかった。
ここでは激突し、敗退ではなく、仲介者を得て、
勇み分けをした例が紹介された。
天晴れ(あっぱれ)というほかはない。
が、医師が、クライアントの生活習慣の改善、向上へと
歩を進めるまでには早くて10年、普通にいったら20年以上はかかる。
いやいや、たぶん追いつくときは来ないだろう。
上から目線の伝統を引き継いできた多くの医師には
カウンセリング型コミュニケーションは身につかない。
したがって、クライアントのライフスタイルの見直し、
生きがいの支援をスキルに取り込んでいる栄養士にとっては、
医師の健康支援市場への参入など、いかほどのものでもない。
その一方で、「メタボにはこれ」「免疫力をつけるにはこれ」
などとやっている栄養士には脅威になるだろう。
そういうヘボい栄養士や医師は、
社会にとってさほど貴重ではないから、
共食いになろうが激突しようが、知ったことではない。
いや、そうなってほしいくらいである。
by rocky-road | 2012-11-29 15:13