「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。

「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0225345.jpg
               屋外写真は昭和記念公園。(平成24年11月18日

インタビューは、マスメディア関係者が、
取材の一手段として対象者から話を引き出す
コミュニケーションスキルであるが、
今日では、インタビューは、
かならずしもプロのスキルではなくなり、
メディア関係者のスキルともいえなくなっている。

結婚披露宴などで、司会者が新郎新婦や、
参列者からおもしろい話を聞き出そうとする場面があるが、
あれもインタビューといっているし、
「おれおれ詐欺」らしき電話がかかってきたとき、
「うちのワンちゃんの名は、なんだった?」と
怪しい相手に尋ねるのも、
イベントへの来場者にアンケートをお願いするのも
インタビュー(筆記式インタビュー)である。
もちろん、食事相談や健康相談には
インタビュー技術は欠かせない。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0231994.jpg

栄養士にインタビュー力が求められるようになったことは、
時代が「栄養指導」の時代から「食事相談」時代へと
推移し、その技術が進化していることの証左である。
指導しか知らない栄養士にとって、
インタビュースキルなど、どこの世界の話?
ということになるのだろう。

栄養士にとってのインタビューは、
医師の問診以上の意味を持つが、
そもそも近年の医師は、
問診にあまりウエートを置かなくなった。
医療機器の発達で、四の五のいっているよりも、
血液検査や電子機器による検査のほうが
正確だし、流れ作業によってスピードアップを図れる。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_024616.jpg

だが、検査数値は、体内環境の現状を示してはいても、
そうなった原因を探り当てるものではない。
生活習慣病に限っていえば、結果がわかっても、
その原因を突き止めなければ、真の対策は生まれない。
そこを埋める有力なセクションが栄養士による食事相談である。
が、いまもなお、「栄養指導」しか知らない栄養士が
なんと多いことか。

そういう現状も頭に置いて、
ロッコム文章・編集塾では、
11月は、インタビューのスキルアップを図る授業を
行なっている。
インタビュー力は、日常会話に活用場面が多く、
少し大上段に構えれば、生涯のコミュニケーション環境を
豊かにすることを伝えたいと思う。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0243739.jpg

ところで、過日、民主党政権が総辞職したが、
これにちなんで、テレビ番組では、
「街の声」を取材して放送していた。
「次の政権に何を期待するか」というインタビューに対して、
「街の声」はこんな具合である。
「どの政権になっても変わらないと思う」
「子育てを支援する政治をやってほしい」
「将来、私たちの年金が心配。そこのところをちゃんとやってほしい」
「私たちはもう歳だからいいけれど、
若い人たちが幸せに暮らせる社会にしてほしい」

これらの〝一声〟に共通しているのは、
政治に対してシラケていたり、
ないものねだりしていたりする点。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0245559.jpg

政治に対する知識や意見が幼く、リアリティがない。
日本の政治が不安定なのは(日本に限らないが)、
こういうおバカな国民に支えられているから……、
そういう結論に行きつくしかない。

が、ここで気をつけたいのは、
街の声のインタビュー手法にトリックがある、
という点である。
政治は、一般国民の日常生活の最周縁部に属する分野だから、
街ゆく人に「次の政権にどんなことを望みますか」と問いかけても、
うまい即答は期待できない。
その結果、前掲のような、小学生レベルの、
おバカなコメントばかりが拾われることになる。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0252811.jpg

サッカーや野球の大ファンでも、
街を歩いているときに、
突然テレビカメラを向けられて、
「ひいきチームの改善点は何か」と聞かれて
適切なコメントを即答できる人はそうそういない。

ましてや政治の話、いちばん苦手な話題。
テレビカメラの前でアガッてしまうこともあって、
思わぬことを口走ったり、
メディアでいっていることをなぞったりすることになる。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0255095.jpg

まともな街頭インタビューをするつもりなら、
インタビューをすることを告げてから、
5分か10分、準備時間を与えて、
考えをまとめさせてからインタビューを開始すべき。
できれば、エンピツと紙を預けて、
下書きをさせてもいいくらいである。

有識者が、適切な発言をするのは、
事前に取材依頼、インタビュー依頼をして
充分に発言の準備時間を与えるからである。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_026558.jpg

アマチュアにそれをやると、
「自然な声が聞けない」「作りすぎる」と感じ、
番組的に「カタくなりすぎる」と考えてしまうから、
安値安定の、おバカ発言集を選択することになるのである。

薄利多売の情報商品としては、
単純で、聞いたような意見であることが
必要条件なのかもしれない。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_026335.jpg

かくして、日本人の政治的センスは、
幼くて、〝天然〟で、
何年たっても成熟することがない、
万年少年・少女を続けることになる。

選挙のとき、「無党派層」が勝敗のカギをにぎる、
などというが、ひいきのチームがないということは、
スポーツでいえば、ファンでもなんでもない、
ただの部外者でしかない。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0264640.jpg

スポーツのファンなら、それでもいいが、
無党派層の多くは、選挙にも関心がなく、
「今度の選挙に行くか」と聞かれて、
「行かない」「わからない」と堂々と答える。
つまり国民の義務を果たしえない、
これぞまさしく「非国民」である。

それを「層」とくくると、誤解が生ずる。
「中間層」「読者層」のように、
互いに関係のない者同士でも、
グループとしてくくられることはある。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0271152.jpg

「読者層」などは、それでも、
ある程度の持続的意志を持つ人のグループだが、
「無党派層」ともなると、職場、地域、
コミュニティなどへの参加意識が薄く、
ほとんど自分のことで精いっぱいの、
トカゲやドジョウ並みの生き方でしかない。

なのに「無党派層がカギを握る」などとおだてるから、
行き当たりばったりの、
持続性ゼロ、思いつきでチーム選びを続ける者が、
いつまでものさばるのである。
「でも、票を左右するのは投票行動の結果ではないか、
ちゃんと国民の義務を果たしているではないか」
との反論があるかもしれない。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0272493.jpg

スポーツチームだって、国家だって、
思いつきでファンになられては困るのである。
そんな連中によって生まれたのが現政権ではないのか。
「いまの政権はなってない」とはよく聞くが、
それを選んだ人の悔恨や反省を聞いたことがない。

政治や国の運営、国家の維持は、
思いつきでは困るのである。
準備性が求められる。
街頭インタビューのとき、
いきなりマイクを向けたのでは、
シビレルような回答が得られないのと同じで、
国づくりは、ぶっつけ本番ではできるはずはない。
「インタビューはお好きですか」と聞かれたら……。_b0141773_0274716.jpg

そこで、インタビューの予告を1つ。
「あなたは国づくりに参加しますか」
近々、インタビューをさせていただくかもしれません。
そのときは、よろしく。

by rocky-road | 2012-11-20 00:27  

<< 「食事相談」が、これから動き出す。 「〇〇用ノート」はどこで買いますか。 >>