海の中でカレーを食す。

海の中でカレーを食す。_b0141773_025397.jpg

前回ここで予告した
「給食便り・広報メディアのための
編集力スキルアップセミナー」
第3回、『情報は身近なところに――
取材力のつけ方』(7月29日)の
ご報告の第2弾は次回にさせていただいて、
今回はダイビング関連の話をしてみたい。
しかし、編集とは無関係な話ではない。

7月は、タイピングの歴史に関するビデオ取材を
2か所から受けた。まったくの偶然である。
海の中でカレーを食す。_b0141773_025508.jpg

1つは、海底ハウスに関して。
20数年以上前までのことだが、
伊豆の三津浜(みとはま)というところの
海底9メートルのところに
家を建てた人がいた。

いろいろの人にクイズ的に尋ねるのだが、
「海の中にある家の玄関はどこにあるか」である。
①天井 ②壁面のドア、 ③縁の下
海の中でカレーを食す。_b0141773_0382575.jpg

正解は③の縁の下である。
台所仕事のとき、桶の中につけた茶碗やお椀を
伏せて沈めると、中にできた空洞はそのままで、
水が入らない状態を保つ。
あれと同じ原理で、気密性の高い家を海底に伏せて、
中にその深度の水圧よりも高い圧力の空気を送ってやれば、
屋内の空間は保たれる。

スノーケラーは、水面から〝そこの底〟まで潜って、
縁の下から「コンニチワ」と入室する。
そこは水深9メートルの空間である。
ウエットスーツを、備えつけのTシャツに着替える。
海の中でカレーを食す。_b0141773_0384916.jpg

コーヒーもある。カレーライスもある。
マージャンもオセロゲームもできる。
海の外には魚、家の中はゲームを楽しむ人。
海の中でカレーを食す。_b0141773_14310.jpg

この世界的な建造物を造った人は田中和栄(かずひで)氏。
出身地の愛媛県宇和島でみかん畑ををやっているとき、
眼下の海を見下ろしながら、
海底居住を思いついた。
小さな住空間から始めて、2度目に
50㎡くらいの家を作ることに成功した。
海の中でカレーを食す。_b0141773_0345952.jpg

私はここには3度訪れた。
最初の訪問は1976年だった。
このとき撮影した8ミリフィルムから、
いくつかのカットをデジカメで撮ったので見ていただこう。

このとき撮った8ミリフィルムを
2回目の訪問のとき持っていき、
その映像を室内の映写機にかけ、
水中に張ったスクリーンに映した。
「これぞ世界初の水中映写会だ」と喜んだ。
海の中でカレーを食す。_b0141773_0392853.jpg

3回目は、閉鎖後の海底ハウスだった。
経営難と潜水事故とが重なって、閉鎖に追い込まれた。
閉鎖後は、空気を送ることをやめたので、
室内には海水が満ちていた。
先導してくれた田中さんは、
「こんなみじめな様子は見せたくない」
と嘆いていた。
海の中でカレーを食す。_b0141773_123586.jpg

その田中さんが、去年(2011年)亡くなった。
そこで、田中さんの業績を、
海底ハウス訪問者へのビデオインタビューという形で残そうと、
科学ジャーナリストの工藤昌男さんが
発案し、自らがカメラを持って拙宅に来られた。
海の中でカレーを食す。_b0141773_0325258.jpg

ビデオ取材はいろいろの人に対して行ない、
当面は編集をせず、記録として保存するという。

さて、もう1つのビデオ取材は、
水中映像サークル発足30周年(2013年4月)の
ための特別出品作品用。
このサークルは、1983年5月に発足した。
私が発案し、数人の発起人の協力を得てスタートした。
海の中でカレーを食す。_b0141773_04021100.jpg

月1回の例会、年1回の映像祭(発表会)というパーターンで
私は20年間、運営に携わった。
取材内容は、発足の動機、その後の経緯などについてであった。

クラブやグループの運営論については
論じたいことはいろいろあるが、
ここでは深入りしないでおこう。
海の中でカレーを食す。_b0141773_204284.jpg

今回のまとめとしては、
まず「編集」は、しばしば指摘するように
プロだけの仕事ではなくなっているということ、
そして「取材」は、文章にすることだけが目的ではない、
ということである。
映像取材もあるし、録音取材もあるし、
美術的取材もある。
写真アルバムを作ることは編集だし、
フォトブックともなれば、正真正銘の編集物である。
海の中でカレーを食す。_b0141773_213917.jpg

ことほどさように、仕事であるかないかは別として、
「編集」や「取材」(したり、されたり)は、
人生の中で何度も経験するということ。
海の中でカレーを食す。_b0141773_029585.jpg

前回も書いたが、編集は「人間の歴史が始まって以来」
育ててきた表現技術であるということ。
コトバが生まれる前に、すでに編集的なことは、
してきた、ということである。
海の中でカレーを食す。_b0141773_041062.jpg

そして、これからはますます、
編集は、人生を充実させるスキルとして、
人々に活用され続けるであろう。

by rocky-road | 2012-08-06 00:41  

<< あなたは魔女を見たこと、ありま... あなたは魔女を見たこと、ありますか。 >>