あなたのシャツの素材はなに?

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誕生日のプレゼントを送ってくださった人から、
事前にメールをいただいた。
「ポリエステル65%のYシャツを発見しました」
それを送りました、というお知らせである。

シャツのデザインよりも先に、
素材の割合を示してあるのがおもしろかった。
厳密にいうと「ワイシャツ」ではなく、
「カジュアルシャツ」であった。
(写真、白地に紺の水玉。ボタンは赤)
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その翌日、あるクラスからポエステル100%の
アロハシャツをいただいた。
このクラスは、3年間、ポリ100アロハを
贈ってくださる。
(これも厳密にいうとアロハ風開襟シャツかもしれない)
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衣服の素材に関して「こだわり度」というものがあるとすれば、
日本人の「素材こだわり度」はどれくらいなのか、
推測する基礎データをまったく持たないが、
おそらく20%以下だろう。

それでも、アメリカ人やフランス人に比べれば、
高いかもしれない(両国は5%くらいか)。
唯一、日本人よりも素材こだわり度が高い国民があるとすれば、
ヨーロッパのどこか、スイスかオーストリアか、
あるいはドイツかもしれない(それでも25%以下)。
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論拠といえるほどのものではないが、
アメリカのボストン、カリブ海のアメリカ領の島で、
ポリエステル素材の衣服が極端に少ないことを感じた。
日本に進出しているアメリカ系の衣服店の品ぞろえからも、
そんな印象を受けている。
それに比べると、スイスやオーストリアでは、
ポリエステル素材の衣服が少なからずあった。

といっても、ひと昔前のデータだから、
現状はわからない。
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こうした印象から、なんだかんだいっても、
日本は世界一のポリエステル活用国てはないか、
と、ひそかに思っている。

なぜポエステルにこだわるのか。
このブログでも何回か書いているが、
ひとことでいえば「丈夫で長持ち、手間いらず」である。
シワになりにくい、汚れが落ちやすい、耐久性がある、
発色がきれい、吸水しにくく、
汗がベタベタしない……などなどの利点がある。
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吸水性の低さを弱点と見る人も多いが、
汗を吸いこんでベタベタになった綿素材の服、
脇の下がびっしょり濡れているシャツや服を見ると、
近くに寄りたくなくなる。
通気性が悪いように思う人もいるが、
それは織り方、編み方でどうにでもなる。
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弱点は、人によってはカブレやアセモの原因になること、
マジックテープなどに触れるとほつれること、
そして、自然には還らない、つまり土にはならないこと。
しかし、綿や麻、絹でも、土に捨てているわけではないから、
致命的な弱点とまではいえない。
ついでにいえば、メーカーにとっては、
繊維生命が長いので、回転率が悪い、
どんどん消費されない、ということがあるかもしれない。
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こんなに利点の多い素材のことを、
日本人の約80%は知らない。
その根拠の1つをあげよう。
世界的に展開中のユニクロは、
広告の中で、素材の表示をしない。
「ドライ」とか「シルキードライ」とかと造語し、
それを使っている。
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ユニクロの店内で、
店員に「ドライって、どういう定義ですか」と尋ねたら、
「乾きやすいのです」ときた。
店員教育の現状である。
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以前、ユニクロの本社に、
「広告にも素材の表示をしてほしい」と
意見を送ったことがあるが、
2回とも無反応。
後日、この会社が社内の公用語を英語にする、
という方針を決めたことを知ったが、
「日本語もまともにできない会社が、
なにが英語を公用語にする、だよ!!」と思った。
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数学者の藤原正彦氏(『日本人の品格』の著者)は、
「ユニクロ英語公用語事件」に触れて、
いったん決めたらずっと続けてほしい、と熱弁していた。
理由は「日本の中で英語を公用語にすれば、
企業は潰れるということがわかるでしょうから」
とのこと。(『文藝春秋』2011年新年号)
人材が限定され、価値観が偏って固まってしまうというのである。

衣類に素材を表示したタグをつけることは、
国際的に義務づけられているが、
その情報を広告に使わないということは、
消費者に対する意図的な情報遮断である。
それは消費者の知的関心レベルを低下させる作用がある。
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ユニクロの影響はすでに出ていて、
アパレル業界は「ボディクーラー」だとか「涼感」だとか、
抽象度の高い用語を常用するほうにシフトしつある。
「情報化」時代は、より詳細な情報を提供するほうに傾くとは限らず、
「あいまい語」に軸足を移して情報化する選択もある。
「ボディクーラー」は、いくらなんでも誇張を超えて虚偽だろう。

「どうせ若者は素材のことなんかに関心はない」
もし、業者がそう考えているとしたら、それを迎合という。
「ニーズはつくるもの」とドラッガーいったそうだが、
低いほうにニーズを下げていくビジネスは、
やがて大地に激突する。
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商品であれ情報であれ、
受益者のライフスタイルを向上させるだけの見識や洞察がないと、
長距離飛行は不可能である。
生物は、継続性、永続性へ向けて進化してきたし、
それは今後も変わらない。

食の世界についていえば、
かつて外食店の商品に栄養表示をする機運が高まったが、
いまは、かなりトーンダウンした。
よくも悪くも「食事バランスガイド」に関する情報提供も
降下体制に入りっぱなしである。
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ポエステルだ、綿だといっている場合ではないのかもしれない。
「1日1食でいい」とか「レバーの生食は消費者の自己責任に任せるべき」とかの
あまっちよろい主張が、いっとき、もっともらしく扱われるのは、
国民の食の教養が落ちている証拠。

「安心・安全」をお念仏のように唱えていることは好きでも、
「レバーを生で食べられないのはイヤ」という、
この思考停止は、ユニクロ商法以上に問題が大きい。
レバーを生で食べて食中毒になるのは本人の勝手だが、
家族への感染、近隣への感染を考えたら、
「自己責任」などとノンキなことはいっていられない。
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世界で第1級の健康国、長寿国のプライドを維持するには、
国民の食教育のレベル維持、レベルアップへの努力の手を
少しも抜くことはできない。
その当事者は、国でも地方自治体でもなく、
栄養士、健康支援者にほかならない。

by rocky-road | 2012-06-13 13:06  

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