スカイツリーを見たら生物を大切に。

東京スカイツリーが5月22日にオープンしたことで、
1人の写真愛好家の被写体リストからは、
スカイツリーはひとまず消えた。
被写体探しにポイントを置くカメラマンにとって、
みんなが撮っているものを一緒に撮るほど
おもしろくないことはない。

スカイツリーは最初からみんなの関心の的、
つまり「追っかけ」の対象だから、
それをどう撮ろうが、「同じ穴のムジナ」ではないか、
そう突っ込まれるに決まっているが、
ニーズにしろ企画にしろ、
半歩前進くらいが、対象者の関心の引きどころである。
ツリーつながりだからといって、
今年切られてクリスマスツリーとして
使われるであろうモミの木とか
オーストラリア原住民が重用してきたオイル、
「ティーツリー」のビンとか、
近畿日本ツーリスト(略称「近ツリ」)の社屋とかを
撮っても、写真コミュニケーションは成立しにくく、
今日的モチーフとはならない。

私の関心を引いたのは、
東京といえども、まだ戦後の風景が残っている
超下町に、場違いにも、世界一の電波塔が立つという
このミスマッチのほうである。
そのギャップを記録しておきたいと思った。
街は変貌し、普通の観光地になる。
つまり地元ではない、
よそ者中心の街になる。
スカイツリーのオープンの様子を
テレビ局が中継していたが、
雨で尖端が見えないツリーを撮るカメラマンには同情した。
報道カメラマンは、ベストコンデションは選べない。
プロカメラマンとはそういうもの。
いい写真は、アマチュアだから撮れることが多い。
テレビ画面の中にばかりいる「戦場カメラマン」よりも、
戦場となっている街や村には
名カメラマンがたくさんいるだろうが、
その作品が世に出るのはずっと先のことである。

スカイツリーに入場したトップグループに
ねじり鉢巻きをしたおっさんがいたが、
この人こそ、私の被写体だったが、
テレビ局はおっかながって、
しっかり取材はしていなかった。
辛いのは、トップ中のトップ入場者は、
名古屋から来たというカップル。
スカイツリーには興味はなく、
水族館に最初に入るのが目的だったという。
みんなの目が空を向いているとき、
あえて地の底の海に目を向ける、そのへそ曲がり度は立派。

が、そこに水族館など作ってくれるから、
ついで水族館ファンが生まれてしまうのである。
名古屋にも立派な名古屋港水族館のほか、
竹島水族館(淡水魚)、碧南海水族館、
南知多ビーチランドなどがある。
が、あのカップルのモチベーションは、
東京まで来て、スカイツリーには目もくれず、
水族館に一番乗りする、というものだった。
今後は、水族館だけ派は減って、
スカイツリーやソラマチでのショッピングついでの
ついで水族館派がしばらくは続くだろう。

ところで、名古屋からの水族館一番乗りカップルが
大の水族館通であったのかどうか、
テレビでのインタビューからは判断できなかった。

へそ曲がり度という点で見ると、
スカイツリーという新名所に興味を持たず、
古い下町と新名所のミスマッチのほうに関心を示す
カメラマンの発想と似ているように見えるかもしれない。
が、私の場合、ツリーの中身には興味はないが、
ツリーのルックスには大いに興味がある。
というより、それがなくては絵にはならない。

そのあたりのニュアンスを論ずる場は、
この5月27日に食コーチングプログラムス主催の
「『給食だより』『広報メディア』を10倍楽しくする
編集力スキルアップセミナー」
があるので、そこで触れてみたい。
今回のテーマは『企画力で勝負!!
ヒット企画はこうして生み出す!』 である。

よい企画とはなにか。
名古屋から一番乗りしてくれた人がいたからヒットか。
冗談ではない。
スカイツリーやソラマチを名乗りながら、
海に助けを求める関係者の企画力の脆弱さ、
その程度の頭脳が日本の一部を動かしている現実。
企画には独創性、提案性、高い理念などが求められるが、
スカイツリーの水族館は、
「他人のふんどし」以外の何物でもない。

遠からず、収支バランスが釣り合わなくなる、
非採算部門になること間違いない。
海に行って、いろいろの魚を採取し、
運び、餌を与え、水を管理し……ということを
年から年中、繰り返すだけではない。
海洋生物を水槽に入れて
泳がしておきさえすればお客は喜ぶなどと
思ったら大間違い。
「やっぱ、ここはショーが必要でしょう」となり、
「マンタがほしい」「ジンベイザメがほしい」
「ジュゴンが来ればもっと人気が出るかも」
「いや、シャチでしょう」……。
こうして、水族館競争は続き、
自然へのインパクトは助長されるのである。
よい企画とは、その先に続く展開をも含んで
評価されるものである。
スカイとアンダーウオーター、
それはイメージとしては対照的でおもしろいが、
「お上りさん」とナチュラリストとは、
属性が違いすぎる。

スカイツリーを見るとき、
そこの下には貧困な企画力がある、
それを連想し続けることだろう。
ヘボ企画の象徴としてそびえ続けるスカイツリーに
深い同情を禁じ得ない。
救いがあるとすれば、
その水族館見物から、
生物の多様性のおもしろさを感じ、
ヒトとしての生き方に喜びを感じる人が
何人か生まれる場合であろう。

食コーチングプログラムスからのご案内
*大橋禄郎先生のブログ、
「ロッキー・ロード」でもお示しされておられるように、
5月27日(日)に、
「『給食だより』『広報メディア』を10倍楽しくする
編集力スキルアップセミナー」を開催いたします。
このセミナーにご参加ご希望の方は
ご住所、お電話番号、ご所属を明記の上、
食コーチングプログラムス主宰 影山なお子宛に
palmarosa@yours.biglobe.ne.jp
お申し込みいただけますようお願いいたします。
前回(3月25日)開催した
第1回「『給食だより』『広報メディア』を10倍楽しくする
編集力スキルアップセミナー」の様子は
影山の「スタンバイ・スマイル」にアップさせていただいております。
お目通しいただけましたら幸いです。
http://palmarosa.exblog.jp/15633341/
*開催場所:神奈川近代文学館 中会議室
*開催時間:10時30分~午後5時
*参加費:1万円(ランチ代別途)
*この研修会は5回シリーズとなっています。
単発でのご参加も歓迎いたします。
お尋ねください。
by rocky-road | 2012-05-22 19:27