いま、同業者に言いたいことは?

ゴールデンウイークの前半は、
横浜での連続3日間のセミナーに参加した。
28日は、ロッコム文章・編集塾の遠距離クラス、
29日は、山下公園、大桟橋を中心とした撮影会、
30日は、食コーチングプログラムス主催の「食ジム」
みなさんの高い参加意識と向上心を感ずる、
爽快な3日間となった。
今回は、ロッコム文章・編集塾の
遠距離クラスについて書いておこう。
遠方のため、毎月通えない人のための、
3か月に1回開くクラスである。

この教室のコンセプトは、「勉強のための勉強」ではなく、
日々の生活、今後の生活に使える思考力、文章力を磨くこと。
「作文教室」ではなくて、
「文章で考える」スキルを身につける教室である。
これを実践するために、宿題を重視し、
全員にご自分の文章を音読で発表していただく。

前回の課題は「栄養士(ケアマネージャー)の専門誌から
『いま全国の栄養士(またはケアマネージャー)に
言いたいこと』という原稿依頼があった
ことを想定して一文を書きなさい」
この課題の目的は、不特定複数の仲間に向けて
いま、いちばん伝えたいメッセージを考え、
それを最適な文章で伝えること。
同業者を想定するとき、後輩なのか先輩なのか、
あらゆる年代なのか、
それが文体を決める出発点になる。

不特定複数の人に向けて文章を書こうとすると、
まず対象者のイメージが浮かばない。
大ベテランが読む可能性があるのに、
新米栄養士に向けて語りかけるような、
ちょっと上から目線の文体になってしまう。
「いま、言いたいこと」は何なのか、
それも、そう簡単には浮かばない。
問題意識を持つことなく、
ついでみたいな生活をしていると、
ここ一番の発言ができない。

栄養士、健康支援者に限ったことではないが、
自分が社会に向けて何かを発言する機会が
あるとは思っていないから、
社会性のある発言の準備などしていない。
それでも健康支援者の場合は、
研究発表や地域のメディアへの寄稿などの機会があるし、
料理教室や食育、生活習慣病などに関する
セミナーの講師を務めることもある。

そういう経験をベースにして、
もう少し多くの人に向けて発言する機会を
ふやしてゆくとよい。
地区予選から始まって全国大会に出場するようなものである。
それは、社会に向けて、
栄養士の存在意義を知らしめることになるし、
もちろん、社会の健康意識を高めることにもなる。
また、一部のドクターによる
フードファディズムの伝播を抑止する効果もある。
「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)は、
健康情報にも当てはまるところがある。

いや、一部の栄養士自身もマイナーなメディアで、
首をかしげたくなるような情報を発信しているから、
栄養士のすべてが良貨の流通促進人とはいえない。
「栄養士に向けて一言」は、
良貨流通人としての基礎体力作り、
という意味もあって課題をしている。

塾生から提出された文章の多くは、
コミュニケーション力の強化の必要性を説いている。
では、そのコミュニケーション力を
どこで、どう学べばよいのか、
そこまでは書ききれていない。
「いま、自分が学んでいるように……」
といってしまえばすむのだが、
それがいえない。
日本全国の栄養士に、
「ここに来ればなんとかなるのに」といっても、
それぞれに事情があって、
そうは問屋が卸さない。

では、健康支援者が、
コミュニケーション力を学ぶ場所や機関があるのか。
それは確かめようがないが、
その可能性は高くはない、とは想定できる。
であるとすれば、北海道の栄養士にも沖縄の栄養士にも
実現可能なコミュニケーション力強化法を
提案する必要がある。
ここで、自分の体験を語る文章ではなく、
アイディアを示す文章表現文と
シフトする必要に迫られる。

「人は文章で考える」のだから、
原稿用紙に向かいながら(宿題は手書きで提出)、
考えなければならない。
「コミュニケーション力をつけましょう」
「文章を学びましょう」程度では、
人は動かない、動きようがない。
考えて、考えて、考え抜く。
新緑の並木の下を歩きながら、
あるいは海岸の砂を踏みしめながら、
そしてもちろん、本を読みつつ、
考え抜く。

そうした「1人プレーインストーミング」が
一流の健康支援者をはぐくむ。
それは、地方予選から全国大会に進出するための、
避けては通れないプロセスである。
ゴールデンウイークの後半は、
提出された原稿に目を通しながら、
さわやかな季節を楽しみたいと思っている。
★写真は、3日間の中からの〝無難な〟ものをピックアップした。
というのは、撮影会のまとめとして、久々にフォトコンを試みることにした。
グランプリ1点、推選2点。受賞者には賞品を出す。
また応募全作品(1人1点)に作品評をする予定。
そのため、応募作品と類似カットになりそうな写真は、
意識的に避けた。私が撮った写真のうちの報告的写真に限ってある。
by rocky-road | 2012-05-02 09:42