不適なコトバの感染症

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数日前、総理大臣の演説を聞いていたら、
北朝鮮や中国が不気味な動きをしていることについて触れたところで、
周辺海域の「不透明感」が増している、という趣旨の発言をしていた。

そのコトバを耳にしたときのイメージは、
足の小指を毒ヘビに噛まれたたために、
しだいにその毒が上にあがり、とうとう頭に達した、
というイメージだった。
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見通しが利かないことをいう比喩として
「不透明」というコトバを使い始めたメディアがどこか、
確かな証拠はない。
しかし、NHKのアナウンサーが
ニュースなどで頻繁に使うとことから類推して、
この比喩を日本中にばらまくことに、
公共放送が深く関与していることは疑いない。

「不透明」とは、その物質の裏側が見えない
物理的状態である。
目をあけたまま、手で目をふさぐと、
その向こうの様子が見えなくなる。
手が不透明だからである。
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しかし、日本近海を往来する中国の軍用艦は、
哨戒機からは見えるし、北朝鮮のミサイル発射基地は、
宇宙衛星などによってモニターすることができる。
その意味において、アジア周辺の緊張状態は、
かなり見えている。「不透明」という比喩は当たらない。

見えないのは、北朝鮮や中国の軍事的動きであり、
次への展開である。
人間は未来を視覚的に見ることはできない。
が、予測はできる。「心」で見るのである。
それを洞察力という。
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日本の最高権力者が、北朝鮮や中国のこれからの動きを洞察せず、
「目をふさがれて見えない」といってもらっては困る。
「これらの国の動きを緊張感をもって注視する必要がある」
というくらいには言ってもらいたいところである。

NHKのニュース担当記者たちが、
今後を予測するのが面倒なものだから、
または、予測することがこわいものだから、
なにかというと「先行き不透明」という紋切型でごまかす。
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プロ中のプロがそういう手抜きをするから、
総理大臣のスピーチライターまでが
「不透明」言語障害に感染してしまうのである。

NHKの報道部に蔓延している、
感染症としての言語障害は、
放送電波によって世界中にバラまかれる。
それを抑止する役割をする放送文化研究所も、
怠慢なのか気が弱いのか、
それをチェックすることができない。
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このほかにも、
NHKが感染源と思われる病気の例を2つあげてみよう。
「寒い春が続く中、被災地の人々が困難が続く中……」
状況を説明するのに、やたらに「中」を使う。
この地球上のことをニュースにするのだから、
ニュースはすべて「この社会の中」に決まっている。

「注目を集める」もNHK発の感染語であり、誇張表現。
ある地域の動向を注目している人はいるだろうが、
「注目」を「集めている」かどうかは、確証がない。
注目なんか、いくら集まっても、
山になって道をふさぐことなどないから、
集まっているかどうかがわかるはずもない。
「注目される」では弱いと思うのか、
「集める」と誇張するのである。
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そのNHKも、所属外の人の好ましい意見を伝えて、
罪の償いはしている。
近日のラジオに出演していた作家の山本一力氏が
マスメディアが省略語を不用意に使うことを戒めていた。

「スマホ」「婚活」……なんと品格のない略語だろう、と。
人間は、コトバによっても、
中から崩れる、あるいは壊れる。
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「人々が、スマホだ、婚活だ、就活だと、
だらしのない用語を使い続ける中、
それにマスメディアも便乗し続ける中、
これからどういう展開になるか不透明な中……」
などと日本語を崩すことは、
人間を壊すことになり、
やがては自分の人生を壊すことになるはずである。

国営放送が使うコトバにも不適なものがある。
感染しないよう、ときには耳にマスクを使う必要もあろう。

by rocky-road | 2012-03-21 01:20  

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