栄養士の再生はできるか。

正月のテレビ番組、
NHKスペシャル「目指せ! ニッポン復活
閉塞感打破の処方箋」というビジネス番組を観ていて、
健康支援者、とりわけ栄養士にも、
大いに参考になることがあった。
薄型テレビや自動車など、日本の得意分野が
次々と韓国や中国に奪われているが、
まだまだ日本の「売り」はたくさんあるという、
沈滞気味の人にはカンフル注射のような番組内容だった。

その中で、円高対策として、
工場をアジアに移す日本企業の事例が紹介された。
しかし企業の中には、日本式を現地に押しつけるがために
失敗する例があるという。
日ごろ「消費者ニーズ」「消費者の目線」といいながら、
現地の事情に適応できない会社があるとは、
ありそうなことである。
普段から、消費者ニーズを考えている者、
この世の中に「安心・安全」などありえないと考えている者は
軽々しく、そういうコトバは使わない。
ビジネスや企業といえども、その程度の常識をわかまえず、
ヒョコヒョコと海外に出かけていく現実、
これも日本の一面である。

もっとも、この番組は、そういうお馬鹿企業をけなすのが目的ではなく、
各地にある地場産業などの技術を使って、
グローバル化時代に適応し、勝ち抜いていく可能性があることを
実証する内容である。
自動車メーカーが小型飛行機の開発で可能性が出てきたとか、
製材所では、木くずを燃料に変えることで電化代を抑え、
マイナス経営をプラスに変えたとか。

さて、健康支援者との関係。
健康支援者は、
本当に自分のクライアントを理解しているのか、という問題。
健康支援者の代表、ドクターの多くは「してやっている意識」が強く、
クライアントの病気は理解していても
病人を理解している人は多いとはいえない。
もっと困るのは、そういうドクターの権威主義だけを
まねる医療関係者は少なくないという現実である。
そんなドクターでも、人体の解剖図は頭に入っているはず。
腹部を押して痛い部分を探るとき、
彼の頭には臓器の1つ1つが浮かぶことだろう。
栄養士にとって、解剖図に匹敵するのは、
その1つは食事の物差し(摂取基準)ではなかろうか。

「食生活の地図」にもたとえられる。
ただし、クライアントにこの地図を示して、
正しい道を教えるという使い方ではなく、
「卵は週にどれくらいあがりますか」
「お肉は、週にどれくらい召しあがります?」のように、
相手の食習慣の利点を見つける手順、道筋として使う。

食材を思いつきであげてゆくのではなく、
一定の体系に沿ってあげてゆく。
この場面では、栄養士は対面するクライアントの
食習慣の利点発見者となる。

多くのクライアントに接している人なら理解しているはずだが、
人々は食生活を改善するという願いを
かならずしも最優先しているわけではない。
それ以前に、自分の話を聞いてほしい、
通り一遍の話ではなく、いままで聞いたこともない質問によって、
自分を知ってほしい、
そして、その中のどれかを支持してほしい……。

「そんなの、本来の栄養士の仕事ではない……」といっているのは、
アジアに移転しながら、現地事情に適応しきれない、
マンネリの「円高苦企業」と同じ。
時代により、場所によって、切り口は変わる。
栄養士が人生相談をやる必要はない。
しかし、人は正しい食事をするために、
健康を維持するために、
この人生を選んだわけではない。
そのことを頭に置いている栄養士と、そうでない栄養士とでは、
食事相談の入り方、進め方はだいぶ違ってくる。
食生活の地図は、相手に押しつけるためにあるのではなく、
相手の中にある宝物を探り当てる探索器具のようなものである。
なのに、どうも「食生活の地図」を
使いこなしていると思われる人は少ない。
この食事法を提案している大学でさえ、
これの適切な使い方がわかっていない。

その理由は、栄養素や食生活の地図が
終点であるかのように誤解しているからである。
栄養学や食生活の地図は、いまではハードウエアである。
いま求められているのはソフトウエア、
あるいはコミュニケーションにおけるコンテンツ。
2011年~2012年の日本のスローガンの1つは、
「日本再生」であるようだが、
健康支援者の1人、栄養士の再生も、
ニーズに気づく感性と、
食や健康をベースにして
人々の幸福感を強化することによって
実現できそうである。

by rocky-road | 2012-01-04 00:42

