あなたにとっての人間学とは?

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去る10月9日に、パルマローザ主催で行なわれたセミナー、
「健康支援者に求められる『人間学』」の終了後、
受講者にお願いしたアンケートの回答を拝見した。
さすがはパルマローザが行なうセミナー、
アンケートにも、きっちりと記入をしていただいているので、
精読するのに時間がかかった。

質問項目は次の5点。
1.このセミナーに参加された理由をお聞かせください。
2.本日のセミナーで、学んだことや、印象に残ったことをお示しください。
3.あなたにとって「人間学」とはどんなことですか。
4.講師、大橋禄郎先生にひとこと! お願いいたします。
5.今回の企画について何かご意見やご感想などがございましたらお示しください。
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アンケートは、主催者であるパルマローザが作ったものだが、
私からは「3.あなたにとって『人間学』とはどんなことですか」
という項目をリクエストさせていただいた。
おそらく、人生で最初で最後に受ける質問ではないかと思うが、
さすがに人間学の受講者、大半の人が3つの空欄を埋めてくださった。
         (空欄のまま1名、1~2項目のみ回答、3名)
この欄の回答の一部をあげてみよう。

◆「あなたにとって「『人間学』とはどんなことですか」
 *人間の本質を見抜いてサポートすることに必要なもの。
 *人間関係、コミュニケーションをよくするもの。
 *自分自身を客観視し、みがくために必要なもの。
 *ヒトと人間の行動を理解し、よりよい人生を生きる手段となるもの。
 *相手に寄り添った健康支援ができること。
 *無意識の発現をニードとしてとらえ、供給するもののヒントにする。
 *個性、言動のすべて。
 *まだまだという「謙虚」な気持ちを持ちつづけること。
 *人間っておもしろい。
 *まず自分自身を知ること。
 *「なぜ、その行動をとるのか」を思考し、物事を深くわきまえ、
  観察、分析して、解釈する。
                          (以下、割愛)
「自分を知る」というとき、
多くは自分の性格や行動様式、
クセなどの把握にとどまる場合が多いが、
今回のセミナーでは、「ヒト」であり、動物である自分について
観察する必要と方法についてお話しした。
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近代人の思考力は、自分が神の子ではなく、
動物の一員であることを理解し、
しかし、「しょせん動物」という見方を避け、
動物との境界を冷静に見極める、というところまで深まってきた。
(まだ、万人がそこまできた、とまではいかないのだが)

病気の治療や予防に軸足を置いて発展してきた栄養学は、
ともすると医師が冒してきた失敗……「病気を診て人を見ない」の
轍を踏みがちである(「てつ」をふむ=失敗を繰り返す)。
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糖尿病を患っている未亡人に、
亡夫の仏壇に供えるまんじゅうを、
「フードモデルに代えなさい」と提案する
ドクターの人間知らずはその典型である。

人間学は、いろいろの専門学問に分化した結果、
その本流に目を向ける機会は少なくなった。
医学や栄養学、分子栄養学、生物学や脳科学、物理学や天文学……
支流は広がるばかりで、その細い流ればかりを見ているうちに、
本流、つまりもともとは人間のための学問である、
ということを忘れてしまった。
人間学が、ずっと進展、充実し続けているジャンルの1つは
文学かもしれない。
「理系」には、その文学にも関心を示さない人が多い。
「病気を診て人を見ない」現象の一因はここにある。
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アンケートの中の「ご意見・感想」欄への回答に、
*「テーマとしてずっと栄養士がほしかったけど、
 ばくぜんとしていたので、もう少し深め、いろんな人に伝えていきたい」
*「シリーズ化されるとよいと思います」
*「理系の科学者、化学者にも学んでいただきたい」
などがあった。
このセミナーの趣意をしっかり理解している方が多く、
大いにやり甲斐を感じた。
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ここで、関連付録の話題を1つ。
世間で行なわれているアンケートについて書いておきたい。
一般的なアンケートには定番があって、
その1つは記述式ではなく、項目選択式である。
いわく、①よかった  ②普通  ③よくなかった

この形式は、筆記習慣のない人、記入意欲がない人、
記入時間や記入場所がない場合を前提としたものである。
全国の健康支援者関連のイベントでも、
少なからずの主催者が、○×式を踏襲している。
セミナーのような、場所も時間も確保され、
知的レベルの高い人が集まった場で、
「①よかった ②普通……」式のアンケートを行なうのは
きわめて場違いのことであり、
集まった人をバカにした対応でもある、といわざるを得ない。
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「よい・よくない」「満足・不満足」の判断は、
その日の天候、体調、家族との関係などで
左右されがちだから、あまり参考にはならない。

そもそも、アンケートを「調査」とだけ解釈すること自体、
考え違いをしている(不特定多数を対象とした大規模調査は別として)。
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セミナーやイベントなどのアンケートは、
受講者の参加意識を高めること、
受講したことを記入者自身が自分にフィードバックすること、
そしてもちろん、主催者が自分の企画が
どのように受け取られたかを把握すること、などにある。

きょう学んだことを記述することは、
その情報がどれだけ受講者の脳裏に強くインプットされるか、
書くか書かないかでは、大きな違いがある。
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さらに、自分の企画したイベントを、
「よかった」「普通」「よくなかった」というようなアバウトな評価で
切って捨てられることに何も感じないような姿勢ではだめ。
アンケートの意味を考えず、惰性でやっていると、
このように無意味なものになってしまう。
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どうしても点数がほしければ、
「満足度は何㌫?」とやる方法があるにはある。

アンケートを行なうにも、それ相当の人間学は必要。
問いかけは、無から有を生む思考システムであり、
自分と自分、自分と人とをより深く結びつける
創造的コミュニケーションである。
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by rocky-road | 2011-10-21 23:14  

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