もう1歩、近づけませんか。
いわれることがよくある。
今回はアジサイに止まったアオガエルを撮った1作。
よい被写体を見つけた、と感心した。
が、残念ながら、カエルまでの距離があり過ぎる。
逃げられるまで、1枚撮っては半歩前進、
1枚撮っては半歩前進を繰り返して、寄れるところまで寄る。
ここでは、トリミングによって、望ましい距離まで寄った例を示そう。
動物写真の多くにいえることだが、
カメラは真横から正面までの90度の角度の範囲で構えたい。
特別の理由がない限り、うしろからは撮らない。
そうはいっても、昆虫などは、真正面から迫るとかならず逃げられるし、
羽が美しいので、それを強調したいときもあるので、
臨機応変の判断も必要になる。
昆虫はクローズアップ(チューリップマーク)で撮ることが望ましい。
ということは、約30センチ以内に寄らねばならず、
昆虫の動きを見て、大胆に、かつ慎重に寄る。
不思議なもので、あまり慎重になり過ぎると、かえって逃げられる。
チョウなどは、動きを見ていると、どこへ進んでいるかがわかるので、
その方向で待っていれば、向こうから近づいてくる。
あるプロの水中カメラマンは、「オレはお前を愛している」と
心の中で念じながら近づくとよい、といったそうだが、
私にいわせると、この方法は素人的といわざるを得ない。
「写真を撮ってやろう」という意欲を殺し、無心に、というより、
人間をやめて、動物になりきって接するとうまくいくことが多い。
水中写真の楽しさを聞かれたときの、私の答えは「動物になれるから」である。
確定申告だの、講義の内容だの、人間的思考を繰り返している人間には、
動物になること、言い換えれば、動物的な感性で、
喜怒哀楽や、恐怖や攻撃性を感じていると、
「人間でよかった」ということよりも、「動物でよかった」と思える。
この実感が好きである。
「待つ」根気と読みが、動物写真の楽しみ方である。
追わない、コソコソ動かない。
このセンスは、人間として堂々と生きる場合にも
案外役に立つものである。
そして、まずは自分のカメラの扱いに、慣れることである。
by rocky-road | 2011-07-07 23:06