赤羽ツアーもエキサイティング

ガイド兼講師役で参加させていただいた。
当初は「十条ツアー」を予定していたが、
対象店の質と量を考えて「赤羽ツアー」に変更した。
いずれにしても、下町で衣服を調達するツアーである。
「時代の最先端を行きたいと思っているレディに
東京北端の下町で身だしなみツアーはないだろう!」と思う人があるかもしれないが、
それは素人の浅はかさというものである。
もちろん、銀座や原宿、横浜などとは仕入れ先も仕入れ値段も違うから、
デザイン性、品質も、売り値も大違い……と考えがちだが、
それでは時代を見ていることにはならない。

よくも悪くも、横並びニッポン、世界中の一流店のデザイン服は
その類似品、バージョンアップ品が数か月のうちに
下町のブティックにも陳列される、
そういうシステムが日本中にできあがっている。

「安物」に違いないが、高級と非高級との違いは、
思っているほと大きなものではない。
よりひどいデザイン、破れやすい素材、切れやすい糸を
意図的に作るメーカーはない。
とくに繊維(とりわけ化学繊維)については、
その高品質素材の生産力において、
日本は、おそらく世界一の座を占めているだろう。

こうした市場性を知っている買い手の楽しみは、
玉石混淆(ぎょくせきこんこう)、いや、「石」は少ないから、
「大玉小玉混交」(だいぎょく しょうぎょくこんこう)の中から、
自分の審美眼に従って良品を見直す楽しみは、
よい仲間、よい仕事、よい書物、よい人生を選択するのと同じくらい、
危険もはらんでいて、それゆえにエキサイティングである。

よりよいものを、より安く、より正確に求めようと思うときのドキドキ感は、
ブランドを愛好する人のそれと大差はない。
仮に、1着30万円のモノにするか、
50万円のモノにするかで迷うときのドキドキ感が、
1着3,000円のモノにするか、
5,000円のモノにするかで迷う人の100倍だったとしたら、
ブランド愛好家はみんな短命になってしまう。

さてこのツアーでは、
女性服の店数軒、スポーツ用品・ウエア店1軒を予定していたが、
1店に2時間以上かかったので、2店でタイムオーバーになった。
お1人さまのお買いあげ点数は、2店合計で平均10点を超えただろうか。
講師の役割といえば、これといったアドバイスをするでもなく(できはしないし)、
多少は顔が知られている店の中で、
「支払いは全部私が……」という顔で立っているだけ、という役回りである。

なにしろ7人が数十点の試着をするので、
2~3箇所の試着室は、パルマローザチームにほぼ占領された。
「どこかの生徒さんですか」「きょうは、パーティかなにかがあるのですか」
「ブティック関係の人ですか」などと、いろいろの声かけを受けた。

私のファッションライフは、必要なものを買い足していくパターンだが、
ショッピングツアーでは、よいデザインのものが見つければ「お買いあげ」という順序。
見ているたけけでも気持ちがよい。
今回に限らず、男1人、おおぜいの女性の衣類選びに5時間もつき合って、
少しも飽きないどころか、充分に楽しいと感じてしまうわが身について
「なにか病気の前兆かな?」と自己診断をしたことさえないのは、
人のモチベーションを強化し、
人生の一部を支えているという自負と充足があるからである。

行動療法では、人のモチベーションを強化する因子を
①「物質的強化子」 ②「金銭的強化子」
③「心理的強化子」 ④「社会的強化子」などと分類する。
これに従うと、衣服は、「物質的強化子」「心理的強化子」「社会的強化子」として
個人のモチベーションを内外から強化することになる。

私は、「衣服とは自分でコントロールできる社会環境である」とする。
その環境は、自分にとっての環境であり、周囲の人にとっての環境である。
その環境は、自分を変え、人を変え、それがまた自分を変える。
合わせ鏡のような反射を繰り返す環境である。

従って、ショッピングツアーとは、
その環境(それは健康的環境でもあるのだが)を
構築するためのエネルギッシュなアクションである。
だから楽しい、飽きない、エキサイティング。
みなさんの表情が高揚してくる、それにまたシビれる。

地方の人は、適当な店が地元にはないという。
それは大玉、小玉の中から、自分の環境を見いだす経験と努力とが
たまたまない、というだけの話である。
奥尻島であれ小豆島であれ、石だらけということはまずなく、
かならず大玉、中玉、小玉を見つけられるはずである。

遠からず、現地密着型の身だしなみツアーの要請が
影山 なお子さんにありそうな気がする。
それは、その地域の人に限らず、日本人の環境を若く、
アクティブに、そして、よりヘルシーに改変する
楽しい環境問題だと思う。
by rocky-road | 2010-11-04 23:04