自分の村を守れない人々

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黒沢 明の名作『七人の侍』は、
収穫期の村を襲っては略奪を繰り返す盗賊武士集団から
貧しい農民が自分の村を守る話である。
戦う術(すべ)を持たない農民は、まずは知恵も腕もありそうな浪人(志村 喬)を見つけ、
その武士に頼んで村を守ってくれる6人の浪人武士の人選をしてもらう。
つまり、よいリーダーを見つけ、チーム編成は、そのプロに任せるのである。
こうして7人のにわか強力チームができあがる。
いま風にいえば、よいコーディネーターを雇った農民の知恵が
武装集団の撃退という偉業を成したのである。

この話は、いろいろの社会現象を見るときのベースになる。
たとえば、自分の専門ではない事物を扱うときには、まずは専門家に頼り、
それをベースにして方向を考えたほうがムダやミスを防ぐことになる。
「餅は餅屋」というコトバがあるように、
村を盗賊集団から守るには強い武士に力を借りる必要があるし、
仮にテレビ局が食を魅力的に放送するなら、栄養士の力を借りる必要がある。
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ところが現実は、そうは甘くはない。
TBSテレビの「はなまるマーケット」という番組で食を扱う場合、
「鮭は夏バテや疲労回復に効果がある」式の、
いまから50年も前の論法でその食品をすすめる。
これを何年も続け、そこから1歩も出られない。
いわく「鮭にはアンセリンという疲労回復成分があるから……」

微量成分の薬用的効果を期待するのは、今日の栄養学の発想ではない。
が、それ以外に食品を話題にする能力がないから、
飽きもせずに、10年1日を繰り返している。
「七人の侍」の農民ほどの知恵も謙虚さもないから、
志村 喬演ずる老かい武士のような知恵者の門をたたくことは、まずなく、
ど素人のディレクターあたりが、雑誌か本の知識を自分流に解釈してストーリーを作ってしまう。
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その結果、ど素人の書いた台本を、専門家である栄養士が読まされるという、
なんとも、がまんのならない手法が定番化しているのである。
栄養士も栄養士で、人がいいから、というよりもテレビ出演という興味を優先して、
農民に作戦を立ててもらって戦うという、みっともない武士を演ずることになる。

とすると、こうした現状の元凶はテレビ局にあるのか。
それは違う。
食や栄養を語る志村 喬が、食の世界にはいないか、いても見つけ出せないのである。
だから、テレビのディレクターがのさばり出す。
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そもそも、栄養士や料理研究家だって、鮭(以後「サケ」と表記)を栄養抜きで
魅力的に語れるのかどうか、怪しい。
その結果、「夏バテ回復にサケを」という、およそ一般人の感覚とは違うお話ができあがる。

辛いが、この状況は、今後も、5年、10年と続く。
それが日本の栄養知識、いや食品常識のレベルにほかならない。
がまんするしかない。
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ちなみに、NHKラジオでは、じゃが芋やアジなどの食品について、
作家やワインコーディネーターに語らせていた。
食を魅力的に語るには、知識と経験、そして魅力的な語り口が必要ということか。

by rocky-road | 2010-09-16 00:37  

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