ダイアモンドの運び人
食コーチングプログラムスの第7期研修の最終回に
エールメッセージを贈る機会をいただいた。
食コーチング型の食事相談や、その根本となる考え方が、
なぜいまにして実績をあげているのか、
それについてお話をした。
問いかけコミュニケーションは、いうまでもなく
人類が言語を獲得して以来、進化を続けてきたスキルのはずである。
だとすれば、栄養士の世界、食事相談の世界において
ことさら新しいスキルとして役割を果たす必要はなかったはずである。
しかし実際には、クライアントに対して知識を与え、
好ましい行動を促す「指導」を中心にしてスキルアップをしてきた。
「水でも太る」「白米を食べ続けるとバカになる」といった
無知の時代が長かったこともあって、
栄養関係者は教えることに慣れっこになり、ギアチェンジのタイミングを見失った。
人類の歴史には相談がつき物だった。
私的な相談ごとは、親が、長兄が、親戚が、あるときは地域の長が、
ときにシャマン(「シャーマン」は間違い。巫女などのこと)が、
古代ギリシャではソフィストが、そうした相談に応じてきた。
心理カウンセリングと食事相談とは、思っていた以上に違うものらしい。
心理カウンセリングでは、受容や共感を大事にする。
その点はよいが、受容し過ぎて相手を引きこもりにさせてしまう可能性もある。
カウンセリングの考案者、C・R・ロジャース氏が、哲学者のマルチン・プーバー氏に
その点を突っ込まれた、という話が、
斉藤 環氏著の『心理学化する社会』(PHP)に紹介されている。
食コーチング型食事相談では、
「生きがいづくり」や「人生を支える」ことを標榜している関係上、途中下車はしにくい。
医療は治療~治癒(または病死)というストーリーを描くが、
食コーチングは「人生を支える」といってしまったがゆえに、
対象者を生涯支えなくてはならない。
受容し過ぎて相手がアリ地獄に落ちてしまっては元も子もなくなってしまう。
したがって、食コーチという仕事もまた、生涯、相手のニーズに応える必要に迫られ、
その点において生涯リーダーとして職責を果たす必要がある。
「それがシンドイ、うっとうしいと思う人は、いまのうちに逃げ出したほうがよい」と、
冗談ではなく、お話しした。
私的な『笑辞典』で、栄養士をこう定義した。
「栄養士は、食の窓から人の人生に侵入するサポーター」
生きがいを支え、人生を支えるためには、
対象者のモチベーションを維持する、いろいろの動因(強化子)を用意する必要がある。
相手の自発性を刺激すると、いままで、宝の持ち腐れにしてきた
いろいろの健康情報や食情報が、おもしろいくらい相手にしみこんでゆく。
砂漠の雨のごとくに。
先人たちがたくさん残した健康・食に関する業績を
いま、ダイヤモンドの原石のように見ているのは、
世界の栄養士、世界のヘルスプロモーターの中でもごくわずかだろう。
そのごくわずかの中に、影山 なお子さんは入るかもしれない。
by rocky-road | 2010-07-13 00:37