「食」は本当に人を良くする?

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ある人から、社会保険実務研究会発行の
「週刊 保健衛生ニュース」(1555号)をいただいた。
その記事によると、去る4月7日、
日本栄養士会と日本歯科医師会とが
「第31回 健康づくり提唱のつどい」を共催したという。

開会セレモニーでは、両会の会長があいさつをした。
栄養士会会長のあいさつの一部。
「食という漢字は〝人〟を〝良〟くすると書く。
食べることで生活習慣病になったのでは真の食とは言えない。
健康で幸せにならない」
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新聞記事の引用だから、微妙なニュアンスはわからないが、
このあいさつには失笑した。レベルが低すぎる。
全村50人という村の結婚式で、長老が祝辞を述べたのではない。
日本の栄養士会を代表する人が、
こんなお粗末なあいさつをするとは絶望的である。

「栄養士の栄養指導には、食事を定刻にとること、
1口を30回を目指してかむこと、
毎食後、歯磨きをすること、入れ歯のメンテナンスを奨めることなども
含むと思っています。そういう日々の生活習慣が
生活習慣病対策だと思います」
少なくとも、その程度のことはいえないのか。
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3,500年も前に発明されたという漢字を論拠に
21世紀の生活習慣病予防を説くとは、時代錯誤がすぎる。

その論法は、こんな話に似ている。
ミイラと一緒に出土したカボチャの種が
奇跡的に発芽し、やがてカボチャが実り、
それで作ったパンプキンスープがおいしかった。
それを味わった人が、
「かぼちゃスープは3,500年前のかぼちゃじゃないと……」
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さらにいえば、「食」という字は、「人をよくする」ことを意味していないから、
このスピーチには誤りがある。
『角川 漢和中辞典』によると、「食」の上の「人」に見える部分は
食物をかむ音(ショク)を表わすといい、
下の「良」は、「食器に食物を盛った形」だという。

そもそも漢字を論拠に現代の事物を説く人には要注意のところがある。
金八先生が説いたという「人という字は人が支え合っている形」も
誤りで、この字は、1人の人間の姿が正しいという。
一画目は人の手、二画目が人のボディを指す。
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栄養士の情報源のか細さには同情する。
超専門家がこの程度のことしかいわないのでは、
あとに続く者としてはやってられない。

といっていても始まらないから、自分の食感覚を磨くしかない。
「感覚」や「センス」は多分に天性のものだから、
磨くことができるのか……と疑う人は多い。
スポーツや芸術的才能などは、多分に天性のところがあるが、
学識や論理的思考は知的作業として磨けるところが多い。

本や雑誌を読むこと、いろいろの講演会やセミナーに参加すること、
そしてセンスがよいと思われる人々と交流を続けることである。

ちなみに「栄養士」の「栄」(榮)を「栄える」という意味で使うのは
いまは使われていない字--「栄」の木の部分が「火」の字、
読みは「けい」で、「光輝く」意味--の転用とのこと。
「栄」は、軽い木、つまり「桐」(きり)のことだとか。
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by rocky-road | 2010-05-23 23:26  

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