栄養士とユニクロ

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新宿タイムススクエアにある高島屋の12階のかなりのスペースに
ユニクロが進出するという。
デパート側は集客のための相乗効果だと歓迎のコメント。
経営が苦しくなったデパートが、人気ブランドを誘い込むというパターンは、
完全に定番になった。

これは、デパートの時代が終わるまでの1プロセスだろう。
人気店の誘い込みは、心臓にペースメーカーを入れるようなもので、
デパート本体の回復はむずかしい。
企画や商品開発といった、ビジネスを拍動させる基礎能力を失った以上、
その組織体は、外科的に延命治療をする以外に道はない。
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こういうことは、デパート以外でも起こっている。
先日、テレビで料理番組を見ていたら、
管理栄養士が日常的な料理を作りながら、
にこやかに「じゃが芋はビタミンCがあって……」と、
しきりに栄養効果を説いていた。

この図式は、デパートが自己商品を開発もせず、
いつまでも古くさいデザインのあれこれを、
昔と変わらぬセールス方法で商売を続けているのとぴったり符合する。
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毎日食べる普通の料理を、いちいちビタミン含有率で説明しないと
おすすめできない……と、ディレクターが思い過ごして、
栄養士にそう言わせるのである。
そのディレクターは、料理などしたことがなく、
料理は栄養素を強調しないとアピールしないと一人合点している。

栄養士も、なんだかわからないままに、
台本どおりにその料理を説明する。
食材の魅力、調理のおもしろさを言語化できない者のシナリオでは、
こうならざるを得ない。
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たぶんデパートでも、仕入れの担当者が
「そろそろ春・夏物シーズンだから、麻と綿の混紡のシャツを50着」なんて
慣習どおりに業者に発注しているのだろう。
彼には、シャツを楽しむ生活もないし、休日をめいっぱい楽しむ心のゆとりもなく、
自分と同じ世代、その前後の世代の消費動向にも関心がうすい。
ただ、先輩たちから教わったやり方を踏襲してきたことだろう。

従来の手法を踏襲する栄養士もまた、
商品開発に行き詰まるとユニクロに助けを求める。
栄養士界のユニクロは、アンチエージングであり、
酵素食であり、分子栄養学であり、粗食のすすめであり……。
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ペースメーカーは、外国由来のもののほうが効果がある、
などと考える、その発想法自体が、
明治維新以来の外科的延命法である。

栄養士の世界にも閉店間際のデパートが
けっこう多いのではないか。
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by rocky-road | 2010-04-25 07:26  

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