写真作品のタイトルの意味
行ってきた。(3月26日~4月1日、富士フイルムフォトサロン・六本木)
今回、自分が応募した作品は優秀賞止まり、ようやく入賞というところ。
グランプリ、金賞、銀賞、銅賞のあとに優秀賞となる。
金賞、銀賞入賞経験者にとしては、狙うはグランプリ。
応募総数31,787点とのこと。
1991年に「イシダイ幼魚のこんにちわ」で金賞を受賞したときは
63,726点の応募があったというから、19年間で応募点数は半減したことになる。
量より質の世界だから、半減したことにはさほどの問題を感じない。
高いレベルの写真が多かったことから推測するに、
腕のある人だけが応募したのかもしれない。
フォトコン好きが減ったことを、関係者は気にしているかもしれないが。
今回は、だれが見てもよい作品が上位を占めているから、
先を越されたことに対する敗北感や無念さは
まったくない(そういう感情は、とっくに捨てている)。
だから、悔しさを秘めていうわけでは、けっしてないが、
受賞作品のネーミングの平凡さには嘆息した。
サケが産卵のために河川をのぼるとき、急流や滝を越えなければならない。
その滝の上でカメラを構え、サケが滝を蹴上がる瞬間を撮った写真のタイトルは
「ジャンプ」
ああ、なんと無意味なネーミングだろうか。
写真で表現できていることはあえてコトバにしなくてよい。
せめて「最後のジャンプ」「振り絞る力」「旅路の果てに」くらいのことを言ってほしい。
そのサケは、川の上流で産卵し、そこで一生を終える。
浅い川底にサケの亡骸(なきがら)がたまる。
それをタカだろうか、鳥たちが食らいにくる。
そのシーンを半水面で撮った作品があった。
この写真のすごさには、同じ半水面写真、わが「フエダイ、夏模様」は完敗である。
タイトルは「餌場」(金賞)。
ああ!
なんという味けのないネーミング。
鳥たちにとっては餌場になっているのだろうが、
人間が与えたのではない、自然の営みなのだ。
そうした一種の食物連鎖に、俗っぽい「餌場」はないだろう。
クジラがイワシを補食する、ライオンが小動物を襲う……。
そういう場所となる洋上やブッシュ(茂み)を「餌場」などとはいわないでほしい。
「カメラマンに言語センスを求めるほうがムリ」と
簡単に許容してしまっては進歩がない。
50年1日のごとく、いつまでもこんなネーミングを許していて、いいのか。
主催者、および選考委員、そしてカメラ雑誌の編集部に責任の一端がある。
写真の質は、タイトルとはまったく無関係だが、
メディアで紹介され、人々の鑑賞対象となる以上、
それはコミュニケーションの質の問題として改善する余地がある。
昔々、カメラ雑誌で、この問題に触れた例もあるが、
いまはほとんど話題にもならなくなった。
怠慢や不勉強を黙認するのはよくない。
少なくとも主催者は、しかるべき社会教育をすべきである。
そこまで言った以上、この文章を主催者や関係者に
届ける義務が生じたようだ。
★上記発表展は以下の場所でも開かれる。
①富士フォトサロン 名古屋 052-204-0830 4月16~22日
②富士フォトサロン 大阪 06-6205-8000 4月30~5月6日
(ただし、銀賞、優秀賞は展示なし)
★コンテストの入賞作品は、インターネットでも見られる。
www.fujifilm.co.jp/fpc/
by rocky-road | 2010-03-30 23:41