裏方から表方(おもてかた)へ。
昔使われていた「裏日本」という呼称は、
国に表裏などない、という理由で廃語になった。
では、「裏方」というコトバはどうだろう。
自分の仕事を卑下、または謙遜して「私の仕事は裏方だから」
などということは少なくない。
栄養計算の仕事も、一般的にいえば「裏方」だろう。
去る9月19日に行なわれた、亀石早智子さんによる
「プロに学ぶ栄養計算」(主催 パルマローザ)講義は、
その裏方が「表方」(おもてかた)へとポジションを替える
歴史的瞬間になるかもしれない。
『栄養と料理』が掲載料理の栄養表示をしたのは1982年だから、
それから27年間、栄養計算は、
目を向けられることが少ない仕事の1つだった。
この仕事の担当を命じられた編集担当職員が、
泣いてその仕事を嫌がったことは、上記のセミナーでご紹介した。
考えてみれば、編集の仕事だって、まだ充分に裏方(おもてかた)とはいえない。
それが気に入らず、編集長時代は、それとなく実名で誌面に登場した。
出版界を見渡すと、「名物編集長」といわれた人も少なくないが、
その人たちは、やがて著述家などになるため、
「元編集長」などという肩書きは消えてしまう。
作家の菊池 寛も『文藝春秋』を創刊した元編集長である。
さてそこで、では「栄養士」は表方なのか裏方なのか、という話である。
人にもよるが、平均的に見れば、まだ軸足は裏方にありそうだ。
私がいうのではなく、栄養士自身が、自らを「地味」「栄養士に見られたくない」
などと口にするからである。そういう人を「おもてかた」とは呼び難い。
では、裏方と表方の違いはなにか。
表方とは、少々の実績と、それを根気よくアピールする人、
ということになるだろう。
人の評価はどうでもよい。まずは、自分で自分を評価するのが先決である。
栄養士は自分を過小評価する性癖があるから、これは改めねばならぬ。
「私、栄養士!」と発言し、自分の仕事内容をはっきり説明し、
自信と誇りをアピールし続ける人は、表方への進出中と見てよさそうだ。
「栄養計算はマニュアル化できない」などといっていては、永久に表方にはなれまい。
それでよい人もいるだろうが、それは自分の財産をお墓に持っていくタイプ、
いわば先人からの借りを社会に還元しない、
借金踏み倒しタイプのライフスタイルである。
パルマローザは、いわば「表方スタンバイチーム」だろう。
話し方やファッション、歩き方、文章などを磨き、
もちろん各々のキャリア(専門性)を深めている。
それに加えて、編集や編集デザインを学ぼうとしている。
裏方的でありがちな編集も、好ましい健康情報、
食情報の提供のためのスキルとして使われるとき、
にわかに「表方スキル」として活用されるようになるだろう。
つまり、表方栄養士には、表方の編集技術、
もっといえば、表方コミュニケーション力が伴う、ということである。
栄養士セミナーのテーマに「文章」や「編集」「デザイン」が取り上げられつつある
が、これは栄養士のステータスを変えるきっかけの1つになるに違いない。
■以下、大橋関連文章・編集セミナー
いずれも要問い合わせ
①9月27日(日) 午前10時30分~午後5時30分
食コーチングプログラムス主催 「健康情報を輝かせる 文章力シリーズ」 パート2
「読ませる文章力・編集力をスキルアップする」
神奈川近代文学館 中会議室
②10月16日(金) 午後3~5時
「人はどんな健康・栄養情報を求めているか」(基礎編)
10月30日(金) 午後3~5時
「読みやすい文章・読んでもらえる文章」(実践編)
中央区保健所主催 同保健所2階
③10月28日 午前10時~午後4時
「栄養士のコミュニケーション力8倍アップシリーズ」
a.「栄養士の輝きコミュニケーション力8つの提案」(影山 なお子)
b.「栄養士のアピール型文章力8つの提案」(大橋禄郎)
東京都栄養士会 集団健康管理研修会
④11月27日(金) 午後2~5時
「栄養士の文表表現力 基本から実践まで」
千葉県市川健康福祉センター 地域保健福祉課主催
千葉県市川健康福祉センター3階大会議室
⑤2010年1月10日 10時30分~午後5時30分
「健康支援者のための 将来を考えた自分づくり 10のアプローチ」
パルマローザ栄養士ブラッシュアップセミナー
神奈川県民センター会議室
by rocky-road | 2009-09-25 11:14