銀プラ、シワシワ。

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久々に銀座をゆっくりと歩いた。
よく耳にするように、銀座に限らず、街はどんどん変貌する。
世界的なブランド店が軒を連ねるようになった。

だがそれは、コンビニの商品列に数品、新商品が増えたくらいのもの。
そんなのを「変貌」などといってよいのか。
きょうは、変わっていなことばかりが目につく、ちょっと悲しい銀プラだった。
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変わっていないものの1つは、甘いもの店の「おかめ」。
昭和20年代から、しばしば利用している店だが、
いまはビルの中に入ったものの、
蔵王あんみつの味やおはぎの大きさは変わっていない。
厳しくいうと、「グリーン生あんみつ」はメニューから消えて久しい。
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文房具店の伊東屋で《クロス》のフェルトペンの芯を買った。
もう20年くらい使わずにおいたペンである。
その芯がいまも書けるのが不思議だが、
替え芯のストックがあるのは、もっと不思議。

日本は、筆記具の激戦国だから、次々に使いやすいものが出る。
そんな中で、けっして使いやすいとはいえないクロスのフェルトペンが、
替え芯を用意して、20余年ぶりの客が来るのを待っているというのは驚きである。
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今後を考えて、2本買っておこうと思ったが、
店員から「長く置くと蒸発するから、1本にしておいてはいかが?」といわれた。
これも銀座の商人魂とでもいうのか。
40代の店員から、それが感じられてうれしかった。

デパートやブランド店の男もの衣服のアイテムの変化のなさも、見事だった。
夏は綿か麻という常識が、たぶん100年は持続している。
70歳を過ぎた東京生まれの男が、その常識に絶望して、
シャツはポリエステル素材で色柄のバリエーションの多い女性ものに、
パンツ(ホントはズボンと書きたい)も、ブーツカットがきれいな女性ものに変えて久しい。
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司馬遼太郎さんは、文化と文明をこう分けた。
「文化」は、ちょっと不合理なところがある。重い思いをして御輿(みこしをかついだり、
山車(だし)を危なっかしく引いたり、襖(ふすま)をあけるのに、
わざわざ座ってあけたりする。精神性に軸足があり、だから、その広がりは限定的。

これに対して「文明」は効率や便利を優先し、それに一度触れた人は、
それを利用しないわけにはいかない。したがってその広がりは世界的。
文化の精神性に対して、文明は物質的だと。

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この説に従うと、男性の夏のシャツ素材は明らかに「文化」。
ほとんど効率を無視している。汗だく、ビショビショ、クタクタ、シワシワ……。
その汗くささに嫌悪を感じないのが文化なのかもしれない。
ところが、この文化、銀座や日本限定ではない。
世界中、夏のある先進国に共通している。
ということは、シャツは綿か麻というのは、世界的な文明のようにも見える。
しかし、この不合理さは、文化以外の何物でもない。

男ファッション業界のリーダーシップのなさを感じる。
「消費者ニーズ」「消費者の目線」……なにをいうか。
それは、アイディアや知恵のない者が口にする逃げ口上。
迎合や妥協はサービスとはいえない。
このコトバを口にする人間は疑ったほうがよい。
例外なくズボラか、弁解癖か、偽善者か、思考力不足か
……要するにアホである。

アンケートや市場調査などをする前に
みんなの心の中にある欲求を、自分の中に生じさせること、
「こんなものがなければならない!!」という、
「欲求不満」、カッコよくいえば「ないものねだり精神」を
モチベーションに変えながら生きてゆく。
そういうライフスタイルは、自分の心の声に耳を傾ける聴力から生まれるのだろう。
市場を活性化する商品も、もちろんそこから生まれる。

男ファッションリーダーの視線は、前を見ているようでいて、
実は左右を見ていたのである。
それが世界の男ファッションの100年ということか。

ここでまた、栄養士をはじめ、健康支援者の話に、一気に飛躍する。
新しい健康意識・食生活観・食育観はリーダーシップと直結する。
よいリーダーは、人々の声に耳を傾けるが、迎合はしない。
へつらうことは、もっとも非リーダー的な行動である。
ということは、「骨粗鬆症を予防するには、カルシウムをとろう」
「外食は控えめに」「お母さんはしっかり子どもの食育をしよう」
などという陳腐な言いようは、夏のシャツは綿か麻に限る、
と言い続けている男ファッションリーダーと同類である。

いや、それらを「リーダー」などと呼んではいけないのだ。

by rocky-road | 2009-07-17 01:43  

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