パルマローザ フォトセミナー 作品評 【パート1】
去る4月29日のフォトセミナーでは、みなさまお疲れさまでした。絶好の写真日和、以前なら、さっさと屋外に飛び出していたでしょうが、今回は、カメラ操作の基本をしっかり頭に入れることを重視して、インドアのレクチャーに時間をかけました。
パルマローザの撮影会を経験している影山なお子さんをはじめ、米澤須美さん、山川さと美さん、尾尻麻弓さん、甲斐和恵さん、吉田美代子さん、そして私の友人の井出哲哉氏など、みなさんがサポートしてくださったおかげで、34人という大人数ながら、おおむねマニュアル撮影のおもしろさを体験してくださったのではないかと思います。それは、出品された作品に高レベルに達しているものが多かったことでもわかります。
今回は初心者も多く、いきなりフォトコンテストというのも酷に思えるので、作品評とおおよその評価を「☆」で示すことにしました。以下、出品された全作品について、講評してみます。(今回は一部発表) 大橋 禄郎
Blue Nail 石川百合子さん (神奈川県 横浜山手 テレーズ主宰) ☆☆☆ 被写体、構図ともに、大人好みの手慣れた作品です。インターナショナルスクールが毎年行なうフードフェア(日本風にいえばバザー)の雰囲気をよくとらえています。タイトルは「Blue Nail」ですが、もし爪のおしゃれに着目したのであれば、その青い爪がもっと強調されていてもよかったでしょう。選者としては「横浜の中のメキシコ(またはブラジル?)」というふうにとらえました。女性のポーズ、カメラアングルにエキゾチシズムを感じます。
キューピーの憂鬱 川崎あいさん (東京都 アトリエコンフォート主宰) ☆☆☆ 無造作に置かれた商品のキューピーを被写体として選んだ着眼がすばらしい。思い切って寄ったことで、キューピーの憂鬱さがよく表現されています。カラフルで美しく、かわいくて、しかし、なんかかわいそう……、作品とネーミングが見事に一致しました。
そのタイトル、「かそう」と読むか「かしょう」と読むのか。上級者向けのネーミング論としていうならば、「かそう」と読むと「仮想」「下層」「火葬」などの同音異義語があるので、造語をするときは、そのあたりのことまで視野に入れて考えるとよいでしょう。
☆☆鏡に映った花、それを撮影する自分自身、デジカメの特性を生かしたおもしろい作品です。こんな場合、普通はカメラが顔の前に来て、顔全体が写らなくなるのですが、ここでは構図を決めたあと、顔が見えるようにカメラを下げ、しかも花に視線を移しています。この演出力を買います。
残念なのは、ホワイトバランスが適正でなく、画面が青ずんでしまって花の美しさが半減しています。タイトルの「饗宴」は「共演」か「競演」にかけたのかもしれませんが、ちょっとピントが違うかも。
☆☆アウトドアでの撮影会が終わって、レストランでひと息。重いカメラを置いて、キャップも脱いで……。気がつけば外は夕焼け。「お疲れさま」というタイトルによって、この絵の説明がしっかりできています。見慣れたものを小道具に使って、美しいストーリーに仕立てました。フレーミングもお見事。
(東京都 寺庵主宰 みなと地域栄養士会会長 管理栄養士)
☆☆ コロナビールを氷水につけて子どもが売り歩いている……インターナショナルスクールのバザーだからこその風景。その印象を1本のビールびんで表現したかったのでしょう。ビールのコマーシャル写真にしないためには、このビールと出会った情景をもう少していねいに説明しておくといいでしょう。びんの周囲の風景こそがこの写真の主題であることを忘れないようにしましょう。
☆☆ 中のお料理が気になるところですが、その前に、そこに写っている自分、および室内に目を向けました。これが被写体ハンターの着眼点でしょう。この容器は一種の魚眼レンズになっているのですが、そのことだけに満足せず、もう少し欲張って、その向こうの、反射でない実像をも一緒に収めてもよかったのでは? 得意の縦位置のフレーミングであれば、そういう表現ができたでしょう。
☆☆撮影会の終了はどこまでか、閉会のごあいさつらしきシーンがあったら、そこで終了なのか。公園とか旅行とか、場所を限定する撮影会のときは、そこを離れたら「無効」となるでしょうが、今回のような場合は、「最寄りの駅に入るまで」と事後法のように決めていいでしよう。その段階まで撮影を続けた根性を買います。夕焼け、ガス灯風街灯、三日月――これを写真に撮らない手はないでしょう。青空と夕景のグラデーション、月のピント、フレーミングなど、確かな技術を感じます。
☆☆むずかしく考えないで、きれいだから撮った、という素直さがよく出ています。実は、講師もこの被写体を狙いましたが、風がけっこう強く、マクロで寄ったレンズの中で、果実(なにかな?)はじっとはしてくれません。そんな状況にめげず、よく粘って撮りました。被写体はど真ん中に置かないで、どちらかに少しずらしたほうがいい、といったアドバイスは、もう少し先にいってからのことでしょう。まずは果実のかわいらしさ、こぼれ日の美しさをしっかりとらえたことを評価したいと思います。
☆ 花の撮り方には、斜め上から狙う定番のポジションがあります(チョウチョウ撮り)。が、それは類型が多く、結果的に平凡な写真になります。この写真は、カメラ位置を下げて、真横から撮っていて、そこにくふうがあります。花の美しさも出ています。ただ、画面を広くとった分、情報が多くなりすぎて、まとまりには欠けます。左手前の草、別の種のトゲトゲの草、くすんだバック、そういうものが「希望」を象徴する花の印象を弱くしています。やはり、花に寄ったほうがいいでしょう。
仲良し 近藤むつみさん(愛知県 学校栄養士)☆よい瞬間を撮りました。ややプラス補正しすぎて、露出オーバー。もうちょっと寄ると、余分なものが整理されて、いっそう2人が際立ったでしょう。タイトルの「仲良し」は抽象的だし、よくあるタイトルでもあります。
少しギャグ化して、「お似eye」 「グラスメイト」(glass mate)なんていう方法もあります。
いただきま~す 甲斐 勧(すすむ)さん
(神奈川県 会社員 エンジニア)
☆ 屈託のない笑顔の瞬間をとらえていてジャストタイミングといえます。ローアングルから撮ったからこそ、この笑顔がとれたのでしょう。2人の手振りもそろっていておもしろい。手前の黒く写ったテーブルをもう少し減らして、2人の頭上を入れたほうがバランスがとれます。
まって! 片桐美和子さん
(青森県 片桐内科医院 管理栄養士/看護師)
☆どんなタイトルであっても美しい手です。しかし、状況がわからない人には、何を待ってほしいといっているのかがわからない。迷わせるのは有利とはいえないので、いっそ「季節をつかむ」とでもして、手そのものの美しさをアピールしたほうがよいかもしれません。その場合、少し出ている袖はないほうが手の美しさが引き立ちます。
光る演奏 藤井葉子さん
(広島県 福祉施設 管理栄養士)
☆逆光で管楽器の輝きをうまく出しました。タイトルもうまい。2列目のグループを入れてバンドのスケールを説明するか、トロンボーンの人に寄ってその背景にメンバーを入れるか、表現方法はいくつかあります。いずれにしても、背景の建物のスペースはもっと減らすほうがよいでしょう。
ハマのアイドル。 山川さと美さん
(東京都 ミラクルベリー主宰 管理栄養士)
☆出番待ちの少女2人。アイドルの目線がほかのほうを見ているので、記念写真ではなくスナップ写真ということになります。スナップであれば、2人のアクションの中から自分だけが発見した瞬間を撮りたいですね。記念写真を撮っている人たちを横から撮っても作品にはなりにくい。写真は、1か所しかないベストポジションを確保するのが基本。
おめかししてるの 松下綾香さん
(神奈川県 厚木市 病院栄養士)
☆ 少女の表情は申し分ありません。しかし、タイトルからすると、ネールペイントをしているのでしょう。この位置からは見えません。そのため、わが子の記念写真のようにも見えます。写真の表現力とは、タイトルなしでも、ある程度は状況説明ができていることです。
横濱グラデーション 小嶌 美里さん
(東京都 株式会社エームサービス 管理栄養士)
☆夕陽は写真の定番的被写体。水平線にしろ地平線にしろ、横に広がる絵なので、一般に横位置で撮る人が多い。それをあえて縦位置で撮ることで、類型から少し抜け出すことができます。この作品では、夕陽よりも青空が紅(くれない)に変わるときのグラデーションのほうを作品化しています。ややマイナス補正することで青空の濃さを強調しています。撮影技術としてはこれでよいと思います。
写真の辛いところは、まとも過ぎて曲がない、という印象を鑑賞者に与えてしまうところです。
by rocky-road | 2009-05-20 13:14