キミは神風となって、国民の健康を守れ!!!

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高校入学当時、さしあたって入りたい運動部がなかったので、
テニス部に入ったら、その直後の体育祭にテニス部員として出るようにいわれた。

これまでは野球一点張りだったので、
ラケットなどという軟弱な用具(当時はそう思っていた)を持ったことがなく、
握り方さえわからない。
しかもダブルスだという。ダブルスのルールなんて、「聞いてないよ」
いくら「ムリだ!!」と言っても、上級生は受け入れてくれないので、
しぶしぶ出場した。
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結果は悲惨で、とても形にはならず、あっさり敗退した。
負けた悔しさよりも、30分ほどの特訓だけで
人前で競技をされられたことで、大きくプライドが傷ついた。
もちろん、即刻、テニス部は辞め、
以後、野球部、陸上競技部、美術部、写真部など、
自分の好きな部を作ったり再興したりした。

さて、いま、特定健診の流れで、検診結果がよくなかった人に対して
栄養士が、対面および文書で、食事相談をすることになった。
文章による食事相談で苦労している栄養士を見ると、
すぐに、わが人生の汚点、テニス部事件を思い出す。
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食事相談のトレーニングもまともに受けていない栄養士に、
対面はともかく、文章で食事相談をさせるなんて、
テニスのルールも知らず、ラケットの握り方も知らない新人を
試合に投入するようなもので、これは、栄養士にとっても
クライアントにとっても、世界残酷物語以外のなにものでもない。

以前、ある会社で「食生活カウンセラー」を養成し、
企業の健保組合をクライアントとするビジネスにかかわったことがある。
このとき、クライアントに渡す質問項目を作るのに10年かかった。
だれでもマニュアル化を考えるが、すでにあるフレーズを
いくら巧みに組み合わせても、血の通った文章にはならない。
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一時はやった、コピー機を使った手相診断も、
画一的な回答しかないことをクライアントに見破られて、すぐに衰退した。
そういう例を見ていたので、回答は手書きとし、
1件1件、しっかりトレーニングを受けた数十人の栄養士が、
自宅で深夜まで回答文を書いた。
しかしやはり、回答者の力不足で、あまり採算が合わなくなった。

いま、この失敗が繰り返されようとしている。
現在の方法はもっと荒っぽく、
カウンセリンク、文章力、手紙の作法などの、
基本となるスキルアップにあまり時間をかけているようには見えない。
これで食事相談が改善されると思っているとしたら、
こうした一連のプランナーは、よくよく人間学がわかっていない。

しかし、現在進行中の特定健診制度に異議を唱えるのはよそう。
神風特攻隊員に「君の死は、本当に生かされるのか」と問うのは、
残酷すぎる。わずかとはいえ、数回のサポートで
生活習慣を変えようと思うクライアントがゼロであるはずはなく、
やや無謀な突撃命令ではあるが、1ミリ前進を「よし」としよう。

が、サポートがうまくいかず、悩んでいる栄養士には言いたい。
うまくいかないのは、キミの努力不足のためではない。
キミはテニス部にきのう入った新人選手なのだ。

それに、人は、そう簡単には変われない。
「行動変容」は、一定の縛りの中(たとえば病院)にある人には可能でも、
野良犬のように自由自在に動き回る、
働き盛りの人たちにはなかなか通じない。
時間的に急かされ、焦れば焦るほど、獲物は逃げる。

結果を出せないことで悩むくらいなら、
「手紙の書き方」のような実用書を探して、
仕事のためというよりも、自分のコミュニケーション環境の向上のため、
と考えて、親しい人たちと手紙コミュニケーションを楽しんだほうが
結果として、自分の健康、世の中の人の健康に有効だろう。

by rocky-road | 2009-02-19 23:07  

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