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ドナルド・キーン氏はアメリカを断捨離した??!!

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10月27日、ドナルド・キーン氏の講演を、
東京都北区赤羽で聞くことができた。

キーン氏は、日本の古典から近代文学までをカバーする
日本文学研究の世界的な第一人者である。
三島由紀夫、川端康成、谷﨑潤一郎、阿部公房、
司馬遼太郎氏らと親交があり、
彼らの作品を英訳して世界に紹介した人でもある。
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アメリカ人だが、2012年に日本国籍を得て、
なんと北区の住人になった。
そこで、北区に併設校を持つ東洋大学が、
「第2回 東洋大学文化講演会 in 北区」
を開催したという次第。
キーン氏は同大学の名誉博士でもある。
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氏は、1922年、ニューヨーク生まれ。
コロンビア大学文学部の学生時代に、
たまたま買った英訳の『源氏物語』を読んで感動し、
日本文学に興味を持った。

敗戦直後の日本に、米軍の通訳として来日し、
以来、日本語や日本文学と親しむようになる。
のちに京都に住むようになり、
そこから本格的な研究と、
日本人作家との交流が始まる。
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講演では、三島、川端、谷﨑らとの交流の思い出を語った。
閉会の辞としての主催者のあいさつに、
こんな部分があった。

「さっき、講演を終えて楽屋に戻ってこられたキーン先生は、
目に涙をいっぱい浮かべていらっしゃった。
親交があり、今は亡き旧友の話をされて、
感慨が深まったのでしょう」と。
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キーン氏の話の中で、
京都に住んでいるとき、
近所に住んでいた永井道雄氏(教育社会学者、のちに文部大臣)と
知り合い、そこから嶋中鵬二(しまなか こうじ)氏に通じ、
一挙に人脈が広がっていった、というくだりがあった。

嶋中氏といえば、
当時、文学系の書物--膨大な日本文学全集や、
月刊誌『中央公論』を出していた出版社の社長である。
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中央公論社は、同誌をはじめ、『婦人公論』など、
知的階層向けの出版物を出す版元として定評があった。
が、1997年に負債を背負って倒産。
以後、読売新聞社の傘下に入って今日に至る。

不思議な符合で、
講演会後、家に帰れば、だれかが置いていった
「中央公論新社」発行の、
『婦人公論』最近号が目にとまった。

ここからはドナルド・キーン氏から離れ、
この雑誌の記事についての論評に入る。

同誌の10月22日号の特集は、
「人づきあいを上手に断捨離する」である。
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おもな記事は、

「人生後半に必要なのは、立ち止まり、
諦めること」(曽野綾子氏へのインタビュー)

「過剰な関係を整理できない原因は、
あなたのなかにある」
(江原啓志之氏、やました ひでこ氏対談)

低空飛行の特集をすると、
テンションの低い記事が集まるものだと、改めて実感する。
世の中に、つき合いたくないのに、
いきがかりでつき合っていて、
それが絶ちきれないでいる人が多い、
という前提である。
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人間というのはおもしろいもので、
一見、経済的に豊かになると、
言い換えれば、ほしいものはたいてい手に入る、
という環境に慣れると、
今度は、捨てることのほうに
強いモチベーションを感じるようになるようだ。

モノをほしがるが、モノは有限で、
置き場所はすぐに満杯になる。
しかし、仕事や余暇活動は無限である。
やればやるほど、やることの意味や楽しみは深まる。
仕事や余暇活動には、結果としてモノという足跡が残る。
これには年齢はまったく関係ない。

ドナルド・キーン氏は91歳、
人間関係の断捨離などしないで、
フィールドとなった日本、
地縁、血縁が深く、
知人・友人の多い日本にやってきて
国籍までとった。
そして、北区の住民に研究の一端を披露している。
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アメリカ国を捨てたのだから、
「大ダンシャリスト」といえそうだが、
次のステージを求めての転居だから、
「整理」や「さっぱり」、
「シンプル」を求める断捨離とは大違い。

山を登っている人には、
モノを捨てているヒマなどない。
死ぬまで、上を目指すのである。

自分の死後、ゴミの山をどうすればよいか、
そんなことは残った者に任せればいい。
富士山を撤去する、というほとの大事業ではあるまい。

ウォーキングのために、新しいウエアがほしい、
次の山行のために靴を買いたい、
災害地の子を支援したときの記録を文章と写真で保存したい、
俳句会の小冊子を作る必要もあってパソコンを買い替えたい……。

目標に向かって進んでいる人は、
たまっていくモノを整理する必要は感じても、
まずはあしたのことを考える。
「いざとなれば、1日で捨てられる」
という覚悟もあるだろう。

人間関係を含めて、捨てることに頭を悩ませている人は、
もともと人間関係がシンプルな人である可能性が高い。
だから、人やモノの整理についても、
相談する人さえいないのである。
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つまり、
モチベーションにも「プラス型」と「マイナス型」がある。
プラスのモチベーションが不足したり、
もともとなかったりする人は、
足し算よりも引き算型の思考になりやすい。

部屋を片づけたい、静かなところに住みたい、
消えてしまいたい、迷惑メールを出して感染させたい、
墓を用意したい、そして、キャリアのある作家までもが
「人生後半に必要なのは、立ち止まり、諦めること」

こういうコメントは、医師が患者に
「肉はほどほどに」「卵は食べすぎないように」と
注意する図に似ている。
このような、あいまいなコメントに反応する多くは、
もともと肉や卵を食べすぎてはいない人である。
かくして、週に1~2回しか肉や卵を食べない人は、
さらに減らして、2週間に数回というペースになる。

何百万という読者を得た作家、
名をあげ、功を遂げた著名人、
何千人という知人友人がいる著名人の言を、
カスタマイズすることなく
自分の指針にしてしまう人はかわいそうである。

「人づきあいの断捨離」も同様で、
もともと少ない人づきあいが、さらに減り、
希望どおり(?)、孤独死の道を選ぶことになる。
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現代の『婦人公論』に、
次の特集としてお願いしたいのは、
「孤独死をする人のための、わが遺体の断捨離」である。

そんなに捨てることに熱心であったのならば、
自分の死体くらい、きれいに処理してほしい。
孤独死を知らせるセンサーを用意しておいて、
業者がそれとわかったら、
火葬場から樹木葬または海か山への散骨処理、
というところまでやってくれる。

悩みは、そうした手順を正しく踏んだかどうか、
見届けてくれる知人、友人はいないから、
業者が手を抜く可能性があること。

だが、捨てるということは、
「あとは野となれ、山となれ」ということだから、
そこまでは責任の範囲ではない、ということだろう。
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さて、『婦人公論』のもう1つのアンハッピー記事は、
栄養学博士を名乗る人物の
「一緒に食べると効果ナシの食材リスト25」というもの。
サブタイトルに「キュウリとトマトはサラダにするな!」と。

「赤貝とイクラの組み合わせはビタミンB1を失う」
「キュウリとトマトはビタミンCを失う」
「ほうれん草とゆで卵は鉄分を失う」などと、
食べ合わせのいろいろに警告をしている。
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いわく
「1982年に、私は日本で初めて栄養面を考慮した
『食べ合わせ』を提唱しました」と。

どういう生理的試験を行なったのか、
示されていないが、
食品の成分は、体内で消化作用を受けても、
そのままの性質を維持して、
胃腸の中で化学反応を起こすと思っているらしい。
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100歩譲って、仮に「キュウリ」とトマトを食べ合わせて、
ビタミンCが失われるとしても、
この2つの食品をビタミンCだけの給源としてとる必要は
ほとんどない。その他の成分はゼロではないし、繊維もとれるし、
そもそも、うまければいいし、彩の必要もある。

(ビタミンは、一時形を変えても、
体内でビタミンに還元される、
という還元型ビタミンについては、
元女子栄養大学教授の辻村 卓先生に論文がある)
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食品を、栄養効果でしか見られないタイプを「栄養素士」といい、
もっといえば、「食オンチ」という。
すでに「食オンチ博士」の少なからずが
私のリストに登録されている。
ヒトも、多くの動物も、
栄養補給だけのために食するのではない。
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いまの日本で、
そんなに心配するほど、ビタミンC不足は起こっていない。
しなくていい心配をしてみせて商売にする、
あまりタチのよろしくない博士である。

言論の自由とはありがたいもので、
そう信じて論じれば「偽装だ」「誤表示だ」と
糾弾される心配はない。
が、回転ずし店で
「さっき赤貝を食べたから、イクラはやめておこう」
などという人がいたら、人の楽しみを奪うことになり、
とんだ社会的迷惑をかけることになる。
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そうやって、食べるものの種類を減らしていくのも、
「断捨離特集」の狙いなのかもしれない。

そうか、やはり断捨離は意味があるのだ。
いかがわしい雑誌や記事は断捨離しよう!!!
ということかな?
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by rocky-road | 2013-10-28 21:33  

海と島への旅--たびたび。

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1970年前後に初めて沖縄の座間味島(ざまみじま)を
訪れてからおよそ40年あまり、
その回数は30回くらいにはなるだろうか。
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その中でも、日程を11日間とったのは
初めてか、あったとしても2回を超えることはないだろう。
平日にランチビールを飲むこと、
旅行日程をロングプランにすることは、
常勤システムに組み込まれている時代にはできなかった。
いま、こうして「借り」を返すことができるわが気力と体力、
そして旅行習慣に感謝せざるを得ない。
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11日間のゆったりプランであったのに、
出かけてみれば、台風23号と24号に阻まれ、
島への連絡船が欠航となり、
4日間は那覇で足止めをくった。
かねがね「創る旅」を提唱している者にとって、
そのこと自体、ショックを受けることはまったくなかった。
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むしろ、台風直下の那覇ライフには興味を感じた。
23号があした来るというタイミングで、
本島中・北部にある「沖縄 美ら海水族館」(ちゅらうみ)に
片道2時間もかかる市内バスで行くことができた。
(7月のハワイでは、シーライフパークを訪ねて、
乗り継ぎを含め2時間近くかけて、
1人バス旅行をしたことと妙に似ていて密かに苦笑した)
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「美ら海水族館」行きは3回目になるが、
台風が来るというのに超満員。
修学旅行生と中国、韓国からの観光客が中心だった。
(翌日から閉園、バスは全線運休に)
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いつもは心が海へ海へと向いているけれど、
今回は、じたばたしてもムダと悟って、
壺屋町の風情のある街角や、
公設市場2階の飲食店街でイカ墨汁や熱帯魚の刺身などを
いつもよりも時間をかけて楽しんだ。
沖縄独特のビーフステーキコースも
2回、堪能した。
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着替えを調達するために
ユニクロショッピングを余儀なくされたが、
この日のユニクロは、
砂漠でオアシスに出会ったくらいにありがたかった。
その日、雨が降ったりやんだりする那覇市内を
歩いた歩数は1万7,667とか(同行の井出哲哉氏によるデータ)。
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さて座間味島。
長年お世話になったダイビングガイドとペンションが
廃業したために、宿探し、ダイビングサービスガイドを
1から更新しなければならなくなった。
スノーケリングクラブ時代にやってきたことを
初心に帰ってなぞった。
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インターネットの時代とはいえ、
やはり信頼する人の情報のほうが精度は数段上で、
ダイビングサービスは「ザマミ セーリング」という
新規のサービスのお世話になった。
双胴船タイプのダイビングボートで、
数十人の乗船が可能、
同行の人のベビーカーまで乗船OKとのことで、
まさかと思っていたが、
お母さんのダイビングまで可能となった。
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今回のメインテーマは、
浅瀬のビーチで以前見かけた「コトヒキ」という魚を
半水面写真で撮ること。
一昨年は、やや焦って、60点程度の仕上がりだった。
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この魚、警戒心が強く、なかなか近くには寄れない。
幼魚の時代は河口や川で過ごし、
成魚になって海に出るという。
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そこは、人間や犬、猫との接触が多いところでもあるので、
それらに対して敏感に反応する。
カラスやトンビに狙われることもあるだろう。
だから普通は逃げ足が速い。
背中の縦縞(魚の縦・横は頭から尾への線で決める)は、
さざ波を模した保護模様かもしれない。

なのに、ここでは、幸か不幸か、餌づいているらしく、
至近距離(25cm)まで寄ってくる。
今回は、これをしっかりキャッチすることを目的とした。
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芸術やフォトコン狙いは、それからである。
撮影技法のくふう、生態観察は
2年がかりでできた。
データは得た。
が、台風多発時代に入ったので、
気象条件についての傾向と対策が
しばらくの研究テーマとなりそうだ。
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by rocky-road | 2013-10-16 17:29