<   2010年 12月 ( 3 )   > この月の画像一覧

 

草食系男子へのメッセージ

b0141773_0355287.jpg

わがロッコム文章・編集塾の一部のクラスの宿題として
「男性誌から〝草食系男子〟と呼ばれている男性に伝えるメッセージを
書くことを依頼されました。600字以内で書いてください」という課題をした。
11~12月でひととおり提出と講評とが終わった。

大半は「草食系男子」とはどういうタイプをいうのかを
インターネットなどで調べて書いている。
下調べとして必要なことだが、その解説に大半のスペースを使い、
肝心のメッセージを伝えるスペースがなくなってしまうものが多い。
調べて書くのは知識が満たされるので快い。
その快さは、いわばランナーズハイで、恍惚感に身を任せ、「どうにも止まらない」。
b0141773_0363799.jpg

これを私は「ミイラ取りがミイラになった状態」と称している。
草食系とはなにか、その概念を把握しておくことは欠かせないが、
それは前置きであって、ポイントは草食系へのメッセージである。
しかし、メッセージを考えることには労力がいる。
それを先送りしたいという心理があるから、
調べたことを書いてスペースを埋めようとする、よくあるパターンである。

これは、人が論ずること、言い換えれば考えることを苦手とするからである。
なんとか論じるところまで進んだ人でも、
最終的には草食系男子に批判的な立場に立ち、励まし調になりがち。
社会活動に関心がうすく、人(女性にも)に無関心のように見える「草食系」に対して
グループ活動をするとよい、女性に好かれようと思ったら女性に関心を示せ、
図書館に行け……などなど。
b0141773_0372424.jpg

それは、シマウマやキリンのような草食動物に「たまにはウサギを襲って食べてみよ」と
いっているようなもので、初めからムリな注文である。
食事相談のとき、「朝ご飯は食べる習慣がない」という人に、
「パン1切れでも食べてみなさい」といっても、それには実効性がない。
「朝をとらないのは、なぜ?」とまず聞くだろう。
それが朝食をとらない人への対応ではないだろうか。
「相手の立場に立って……」というのが近年の食事相談の原則。

「草食系へのメッセージ」の宿題40数点の中で、
比較的うまくいった文章を紹介しておこう。
森 晋一郎氏によるものである。(部分的に大橋が添削)
この文章では、「草食系」は昔からある「いまどきの若い者」的な
カテゴライズであることをデータによって示している点。
よい着眼である。
これは、草食系をいったんは認めていて、現実的である。
b0141773_037499.jpg

----------------------------
森 晋一郎

まず、草食系の特徴をあげてみよう。
「恋愛にガツガツしていない。傷ついたり傷つけたりすることが苦手」。
元気な女性からは、そう呼ばれることも多いようだね。
25年ほど前にも〝新人類〟とか、〝宇宙人〟とかと言われた世代があった。
これらは、大人たちが「近頃の若い者は…」的にうらやむ心でいう言いようである。

「草食系男子解体新書」なる調査があり、以下の3つを特徴としている。
●20~34歳のうち草食男子と自覚する人の割合は49.7%。
●大事なのは自分の時間と友人。●メディアへの接触率は高い。
b0141773_0382541.jpg

調査結果の詳細を見ると、
①草食系の自覚は歳を追うごとに少なくなる(20~22歳60.5%。 32~34歳41.7%)。
②草食男子が日常で重視していることは 「プライベートな時間」「友人」が非草食群に比べ多く、
  「家族」「恋人」は非草食群が多いがその差は僅差。
③普段から接触しているメディアでは、PC・書籍・雑誌・ラジオなど
  ほぼ全分野で草食男子が多かった。 これらの結果からは、引きこもって元気がないとも、
 社会に出て必死にスキルアップ をしているともとれる……。

しかし、気をつけたいことは、得体の知れない「草食系男子論」を受け入れて、
他人の作ったストーリーに乗ってしまうこと。
今は草食とでも昆虫食とでも言わせておけばいい。
自分の時間をつくって、部屋でゲームに興じるのも、自分磨きをするのも、
君が決めることだから。
b0141773_0391037.jpg

----------------------------------
これが正解というものはない。
が、この文章は、草食系男子が受け入れやすいメッセージとなっている。
考え方のバリエーションの参考にはなるだろう。

草食系を容認しているように感じられるからよいというのではない。
相手のメンタリティにそった論を展開しているからよいのである。
「草食系」に対して批判的なメッセージを伝えることもできる。
「異性に関心がない、おおいに結構。人口過剰にブレーキをかける尖兵である」と。
応援しつつ、逆説で攻める。
「そして、老人ホームで1人淋しく死んでゆく、それも、地球への貢献である」と。
[PR]

by rocky-road | 2010-12-27 00:41  

母校に錦を飾る。

b0141773_0445664.jpg

以前(女子栄養大学出版部退職後)、
母校の高校から、
「卒業生が社会人として
活躍している状況を話してほしい」
といわれて出かけていったことがある。
保護者も参加するというので、
「予暇」について話したと思う。

が、初めからザワついていて、
話に集中する様子がない。
これはムリだと思ったので、
こういう話から始めた。
「若者に未来があるというが、
それは正しくはない。
努力しない者には未来などない。
未来があるのは、努力した者と、運のよい者だけだ」
そういったら、シーンとなった。
b0141773_0454678.jpg

講義内容は覚えていないが、
この部分だけは覚えている。
以後、母校の大学で
非常勤講師を約10年、
前職の大学でも
非常勤講師を続けているが、
これといった
エポックメーキング的な認識もなく
今日に至っている。

東京人が東京で働く場合、
「故郷に錦を飾る」という認識は生まれようもなく、
あえていえば
「母校に錦を飾る」というところだろうが、
個人の歴史は、
時代の流れ以上に連続的で、
まさしく「行く川の流れ」のように
メリハリがないものである。

しかし、
人が似たような経験をするのを見ていると、
それは充分に劇的に思える。

先日、影山なお子さんが、
最初の大学である
日本女子大学の卒業生組織の招きで
講演をするというのでついて行って、
聴講してきた。

いきなり「食コーチング」の話をするのも
素っ気ないということなのか、
なぜこの大学を選んだのか、
そして、社会人になったあと、
女子栄養大学に社会人入学したいきさつを話した。
b0141773_048092.jpg

在学生も来ていたので、
彼女たちにも刺激を与えたことだろう。

日本女子大の場合は平塚らいてふ、
女子栄養大の場合は香川 綾という
日本において女性の社会進出を促した人が、
影山さんの動機になっていたという。

それは、食コーチングで
栄養士のコミュニケーション力を
強化する仕事につながるのかもしれない。

そしていま、
2つめの大学で非常勤講師をしている、
影山さんも母校に錦を飾っていることになるが、
ご本人にはその意識はない。
だから、歴史家(だれが?!)として、
この事実を記録しておくことにした。
b0141773_050816.jpg

さて、一般論として、
大学というところは、
非常勤講師なくしては成り立ちにくい。
経済的理由というよりも、
情報の多様性という点において。
実際、常勤教員の数倍の非常勤が
大学を支えている。
生きている社会で仕事をしている者から見ると、
大学は多分に無風地帯。

ここに現場の知識や
技術を送り込む役割を非常勤が担っている。

問題なのは、
多くの非常勤を配置するだけでは、
その大学らしさが出にくい点。
経営陣が、常勤・非常勤講師に対して、
その大学のコンセプトを頻繁に伝えないと、
衰退が続く百貨店の後に続くことになりかねない。
b0141773_0505615.jpg

そして、あなたへのアドバイス。
現役で働いている人に
常勤講師や准教授、
教授の話があったときには、
できれば非常勤でかかわることを奨めたい、
教育が三度のメシより好きという人は別として。

そのほうが、
多様な人生が楽しめる。
などというと、
現役の常勤教員からブーイングが出るかもしれない。
いやいや、
大学勤務だけで日々を送っている
怠慢な人間は大学教員にはいないから心配ない。
それぞれライフワークを持ち、
教育の仕事と、
自分の仕事とを楽しんでいることは疑いない。
[PR]

by rocky-road | 2010-12-23 00:51  

ダイビングは何のため? 健康は何のため?

b0141773_113065.jpg
11月27日から12月4日まで、
モルディブで潜ってきた。
モルディブ行きは4回目になるだろうか。
モルディブとは、インド洋に浮かぶ1,200の島からなる共和国。
「モルディブに行く」とは、1,200分の1のどこかの島に行くことである。
1つの島は1つのホテルによって運営されている。
原則として、いくつかの島を巡ることは、制度的にできない。

今回は「ファンアイランド」へ行った。初めて訪れる島である。
島を指定せず、ツアー会社とダイビングサービスに任せた。
したがって、予備知識はまったくなかった。
思ったよりも大きな島で、一周30分はかかりそう。
これまでの島は、一周10分程度だった。
b0141773_1217100.jpg

旅行者の大半はロシア人のように見えた。
経済的に豊かになったアカシなのか、
ロシアの旅行会社が旅行者を送り込んでいるようだった。
珍しく、日本人とは会わなかった。
それは、この島が日本人好みのダイビングの最適地ではないことを
意味するのかもしれない。
日本人ダイバーにはカメラ派が多く、したがって、海のロケーションを重んずる。
透明度がよい、魚が多い、ダイビング地まで近い……などが条件となる。

ロシア人は、ただひたすら、日光浴に励み、赤いお面をかぶったみたいに
顔を真っ赤に焼き焦がしていた。美男も美女も。
b0141773_113573.jpg

年賀状に使う写真を撮る目的が大きかったが、これといった写真は撮れなかった。
が、これをロケ地の問題にすることはできない。
カメラマンたるもの、どんな悪条件をも予想し、それに対処しなければならない。
今回は、機材の点、計画の点、意欲の点で、万全を期したとは言い難い。
「ロッキー、老いたり??!!」

幸い、同行の海仲間は、初めてのモルディブということもあって、
気合いが違っていた。それゆえに、よい写真が撮れた。
準備性の違いである。
30年を超えるダイビング仲間、井出哲哉氏の一人勝ちというところか。
b0141773_15689.jpg

ところで、ダイビングというレクリエーションは、
かつての勢いを失っているように見える。
私が創刊にかかわった2つの雑誌も、
月刊から隔月間に、さらには季刊になったり廃刊になったりした。
1964年、私がダイビングを始めた当時も、
「ダイビングがブーム」といわれていた。
が、その実態は、現在のダイバー人口を大きく下回っていただろう。

現在のダイバー人口は、「ペーパーダイバー」も含めると、
40年前とは段違いに多い。なのに、やはりいまは低迷期に見える。
それは、ダイビングの楽しさを語るコトバを失ったからだと思う。
ダイビング雑誌は、ダイビング地の紹介やダイビング機材の紹介以外の
情報を提供できなかった。ダイビングがダイビングのためにある、そうしか思えなかった。
b0141773_153267.jpg

日々の生活の中にダイビングや海や旅をどう位置づけるか--
それを私は提案してきた。軸足は生活や人生に置き、
やや軽くなった足で大きなコンパス円を描く。
軽いほうの足で、いろいろの情報(たとえばダイビング経済学、
ダイビング新婚旅行ガイド、海を感じるためのインテリア)をかき集めてくる。

が、ダイビング雑誌の発行者たちは、両足を海に漬けっ放しだった。
両足を海に入れてしまうと、新鮮なテーマを提供できなくなる。
いわゆる「専門バカ」に陥る。
ダイビングの楽しさを、どう語ったらよいか、そういう提案をしてこなかった。
だから、ダイビングが「沈黙の世界」になってしまった。
b0141773_1135698.jpg

ゴルフ雑誌にしろ釣りの雑誌にしろ、
それ自体を目的化してしまうと、幅も奥行きもなくなる。
人は、ダイビングの名人、ゴルフの選手、釣り名人になるために、
それをしているわけではない。
人生の楽しみとしてレクリエーションを楽んでいる場合が大半である。

しかし、専門雑誌のオーナーや編集者には
「人生」や「ライフスタイル」といった概念になじみがない。
なかには「甘っちょろい」と毛嫌いする人もいる。
このあたりから、手段と目的との混同が始まる。
世界を複眼的に見られないのである。
水中を泳ぐ魚にも、岸の人や犬、空を飛ぶ鳥は見える。
が、ダイビング情報を提供する人たちは、それほどの視野はなかった。

b0141773_1142095.jpg
こういうことは、栄養士や健康支援者の世界にも起こる。
先日のリーダーゼミのとき、
「美容師の卵たちに健康について講話をするプランを示しなさい」という
課題を出したら、「若い美容師」ということを忘れて、
いつもの健康論や食事論を展開してしまう人が少なからずいた。
これは、ダイビング雑誌の編集者たちが、
ダイバーがなんのためにダイビングをしているのかを見失い、
似たような情報を送り続ける状態と同じである。
b0141773_1151356.jpg

相手はだれなのか、相手はなにを求めているのか、
そうした基本中の基本を忘れて、類似の情報を提供していたのでは、
やがて飽きられてしまう。飽きられるまでにどれくらいかかるか。
ダイビング雑誌の場合、30~40年くらいだろうか。
栄養情報や健康情報の多くは、とうに飽きられているのではないか。
b0141773_1162234.jpg

社会貢献はそんな単位では成し遂げられない。
一生の仕事、二代、三代にわたる仕事、
そう考えないと、風化しにくい思想や感性を生み出すことはできない。
食や健康の楽しさを、ときには、「食」や「健康」というコトバを使わずに
語るくらいの表現者になることを目指してはどうか。
b0141773_1164111.jpg

[PR]

by rocky-road | 2010-12-09 01:17