「民度」の捨て方、拾い方。

b0141773_16133993.jpg

過日、近くのJR駅構内のゴミ箱に、

大きな紙袋を押しこもうと苦戦している女性を見かけた。

なんとかゴミ箱に押しこんだと思ったら、

今度はビールの缶を2個、

それに清酒の5合びんを1本を、

「ペットボトル」「缶」の回収箱に押しこんでいる。

b0141773_16135441.jpg

状況を察したので、

「それ、みんな、電車の中で

あなた1人が食べたり飲んだりしたものなのですか」と

声をかけてみた。

「そう」と、彼女は答えて、

こちらに注意を向けることなく作業を続けている。

「ちょっと、顔を見せて」と私。

顔半分をこちらに向けた。

「それだけ飲んで、顔にはまったく出ませんね」

「そう」と無表情に彼女。

b0141773_16140541.jpg

50歳代の人だろうか。

家庭のゴミを駅の構内に持ってきて

捨てていこうという魂胆が一目でわかる。

彼女は咎められているという認識を持つまいと 

まったくひるまず、無表情を保つ。

b0141773_16161452.jpg

そこで、

「あなたは、肝臓も強そうだけど、

心臓はそれ以上だね」と言ってみた。

今度はさすがに「そう」とは言わず、

足早にホームに向かって走っていった。

b0141773_16155315.jpg
b0141773_16160075.jpg

いまから50余年前の

196410月の東京オリンピックの前年、

国鉄(当時)の山手線車内で

酔った男2人が、座っている女性のひざに

代わる代わる腰を下ろすのを見かけた。

b0141773_16172015.jpg

1人で2人の男を相手にするのはムリだと思ったので、

近くにいた自衛官に声をかけた。

「やめさせたいので手伝ってほしい」と。

が、彼の答えは冷たい。

「制服を着ているのでそういうことはできないんです」

b0141773_16182222.jpg

なぜか私は納得して

(国は守れても1人の女性の安全は管轄違いで守れない)、

車掌に伝え、駅員に伝え、ラチがあかないので、

けっきょく、東京駅の鉄道公安室に駆け込んで、

状況を説明した。

と、そこにいた公安官の答えは

「相手は動いている電車の中だから

つかまえられません」であった。

b0141773_16190487.jpg

b0141773_16184837.jpg

この顛末を新聞の投書欄に投稿した。

それが新聞に出た日、

鉄道公安室長が、

私の不在のわが家にやってきて、

謝罪していった。

なんと、ショートケーキ30個を手土産に。

オリンピック開催を控えて

「公徳心」を高めよう、

という運動が盛んになっていたころである。

b0141773_16191581.jpg

あれから50余年、

そして戦後、70余年、

長い間、日本人の「民度」の正体を見てきたので、

駅の構内に家庭のゴミを捨てていったり、

構内に自転車で入ってきたり、

駅のトイレの洗面所で

髪を洗う若者を見かけても、

驚くほどのこともない。


むしろ、

こうした大人の甘え行動は

日本ののどかさを示す「原風景」なのかもしれない。

が、しかし、

その「のどかな国」日本は

「地下鉄サリン事件」によって、

無差別テロの不名誉な先進国になってしまった。

ソフトターゲットを狙うテロにしてみれば、

こういう「ゆるい民度」の国は

狙いやすいのかもしれない。

b0141773_16201750.jpg

と、思いたいが、そうはいかない。

ニューヨークでもロンドンでも、

パリでもサンクトペテルブルクでも、

そして、バリでもマレーシアでも起こった。

テロの起こり方、起こし方に法則性はない。

思想や宗教、民族、格差、貧困、支配と被支配……

どんな論法ででも理屈は作れるが、

多分に後づけの解釈や理屈である。

b0141773_16211133.jpg

確かなことは、

それが人のモチベーションであること、

凶器には、火薬や武器、毒ガス、自動車、

飛行機などを使うこと。

つまり文明が生み出した道具を使う。

文明は、道徳心や公徳心を否定したがるのか。

そんなことを考えつつ、

渋谷のスクランブル交差点を渡るときには、

どんなタイミングでテロリストを発見するか、

あるいは、いざというとき、どう避難するか、

ハリネズミのように気張って歩いている。


だというのに、

そんなスクランブル交差点のド真ん中で、

ウエディングファッションの2人が

記念写真を撮っている場面にぶつかった。

スクランブル交差点は、

外国からの旅行者にとって

すっかり観光スポットになっているのを

改めて感じた。

b0141773_22530038.jpg

5分もすれば警察官が来て、

スクランブル・ウエディングを中止させる、

だろうと思ったが、ずっと続いていた。

「ゆるい民度」の国から、

「ゆるい民度」の国にやってきて、

交差点のド真ん中で「誓いのキス」をする風景は、

なぜか許せる光景だった。

b0141773_16214803.jpg

「あなたのドレスはきれい、

きっとハートもきれいなんでしょうね」

と声をかけずにいた自分を

ほめてやりたいと、思う。

「粋」の文化の後継者にはなれないが、

「野暮」を避けたい文化の後継者としての自負は、

ひょっとして、いくらか残っているのかもしれない。

b0141773_16195985.jpg

ちなみに「民度」の定義。

「人民の生活や文化の程度」(広辞苑)


[PR]

by rocky-road | 2017-04-05 16:36  

<< きょうも、ダイビングシーズン。 信仰も健康も……。 >>