日本人の壊れ方、滅ぼされ方。

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悲観論というのにも、
それ相当の意味がある。
それは、人に強いモチベーションを与える。
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昔、ある生理学者は、
白米を食べている日本人はバカになると警告した。
やや時代が下がって、
ある生態学者は、環境汚染を深刻にとらえ、
日本人の「寿命41歳」説を唱えて物議をかもした。
また『壊れゆく日本へ』という終末論的書物を著わした。
ご本人は89歳まで生きたというから、
自ら自説の倍は生きて、
あっさり自説を覆した。
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近いところでは、
ケイタイやネット(当時)依存症によって、
日本人が「壊れる」と警告した人がいる。
「壊れる」とはどういうことか、
その定義は、むずかしい。

新しいところでは、
ことしの1月、
医学博士で栄養士が、
「塩分が日本人を滅ぼす」という本を書いて
滅びゆく日本人に警告した。
新聞広告には、「和食は体に悪い」とある。
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以上あげた1例を除いて、
どの説も、提起したその瞬間に、
「それはないだろう」と、
少しは予備知識のある人を疑わせた。
あとになって「あの説は誤っていた」
ではなくて、瞬間的に眉にツバをつけた。
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例外は、ケイタイ・ネット依存症。
いまでいえばスマホ・ネット依存症への
予測と警告は的中した。
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すでに「壊れて」いる人は多い。
プラットホームから落ちたり、
自動車に轢かれたり、
自分の運転する車で対向車にぶつかったり、
人を轢いたりして、
自ら壊れていく者があとを絶たない。
この場合は「日本人」に限らず、
依存するすべてのヒトを「壊す」
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壊れゆく「地球人」ということになろうか。
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ここで゛いう「壊す」「壊れる」とはなにか。
1人では正常な日常生活ができなくなる
もっといえば、
人生の計画や目標、社会参加ができなくなる状態。
人格破壊を指すものだろう。
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悲観論や誇張、思い込み発言の利点は、
なによりも人の注意を引くし、
実際、それによって一時的にせよ、
行動修正をする人がいることはいるだろう。
スマホによって壊れる、
塩分によって滅びる、といわれて、
一瞬でも、ドキッとする人はいるだろう。
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しかし、ネーミングとしては、
「日本人」と、対象を広げてしまうより、
「あなた」としたほうが「迫り度」は高くなる。
「あなたはスマホで壊れる」
「あなたは塩分のとり過ぎで滅びる」
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いずれにしろ、
こういう悲観論がはやるのは、
平和ボケが下地にあるからだろう。
「杞憂」(きゆう)の故事に従えば、
「杞の国」の人は、
「いまに空が落ちてくるかもしれない」と心配した。
外圧があり、飢餓があり、地震や雷があり、
戦乱があるときには、
空が落ちてくる心配など、していられない。
一時的にせよ、そのときの「杞の国」は
平和ボケしていたとしか思えない。
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現実には、
日本人は大気汚染を緩和し、
その技術を途上国に輸出するようになったし、
白米を食べ続け、一汁三菜を基本とする献立で
健康度を支え、世界的な長寿国になった。
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「バカ」になったかどうかは、
白米否定の亡き生理学者に聞くしかない。
スマホ依存症を指して、
「ほら見ろ」というかもしれないが、
スマホ依存は白米を常食したこととは
関係がないだろう。
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国民の塩分摂取もそれなりに減ってはきているが、
欧米人に比べると多いといわれる。
正確な摂取量の把握はきわめてむずかしく、
正確なデータがほんとうにあるとは思えない。
ともあれ、日本人は
塩分で滅びるどころか、
長寿国街道をトップ集団に入って走り続ける。
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悲観ついでに、
私の分野からの悲観論。
「うれしいというか、感動というか……」
「迷惑というか、災難というか」
「恐怖というんじゃないけれど、かなり怖かったです」
「満足というんじゃないんですが、私の中では満点です」
という発言を、テレビインタビューで聞いていると
こういう壊れ方もあるのかと思う。
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ある表現をするのに、2語を使う。
言い切らない、言い切れない。
インデックス的に1語を示し、
それを否定するかのような振りをして
実はインデックスと同様の話をする。
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こういうあいまい表現、
偽装表現を少なからずの人がする。
若者から始まって年長者にも伝染している。
これは単なる流行表現とは思えない。
もう少し深い心理がある。
逃げ道をつくる、
1文を長くして、いかにも内容がありそうに装う、
コトバの扱いが雑になっている。

日本人の言語感覚に異変が起こっているのか、
いろいろの分析ができる。
一言でいえば「信念の喪失」だろう。

自分を甘やかし、人に甘えるなど、
セルフコントロールができなくなっている。
もともと「セルフ」には限界があって、
外から箍(たが)で絞めつけないと、
自分がどこにいるかがわからなくなる。
昔の人はこれを「タガゆるむ」とか
「タガがはずれる」とかといった。

こういう言語現象を警告して
「『……っていうか』が日本を滅ぼす」
「あいまい表現によって日本人が壊れる」
といいたいところだが、
中から壊れるのには、それなりに時間がかかる。
一方、外から滅ぼされる可能性をあげ、
「日本戦前説」ともいうべき悲観論が、
一部のメディアには続出している。
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日本は太平洋戦争後、
「戦争はいけない」信仰を持ち続け、
その信仰ゆえに戦争から免れてきたと
本心から思っている日本人が
少なく見積もっても1000万人くらいはいる。

そういう信仰を持ちさえすれば戦争から免れるのなら、
世界中の国々は
膨大な軍事費を捻出するようなバカなことをせず、
「平和憲法」を作って、
ひたすら祈ればいいだろう。
戦争の定義の1つに
「よりよい平和の維持」というのもある。
人類は有史以来、よりよい平和を求めて戦ってきた。
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生物には、「増殖」という習性がある。
ハチも蚊も、ゴキブリもミミズも、
チョウチョウウオもクマノミも、
杉もカエデも、桜も梅も
棲息環境を広げるために、
必死に環境に挑戦し、適応を図っている。

人間とて例外ではなく、
国外に出稼ぎに出る、
他国の国籍をとりたくて、その国で子を産む、
留学をする、現地で結婚をする、
そこへ家族を呼び寄せる、
他国との境界付近を意図的にウロウロする、
ときに領空・領海を侵犯する……。
その動機の根底には「人口圧」がある。
気圧と同じことで、
高低差を埋めようとする物理がある。
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人口圧が高くなっている国にとって、
「平和憲法を守ろう」
「戦争をする国になるな」と叫ぶ国は、
「わが家にはカギはかかっていません」
「防犯ブザーは作動しません」と
往来に向かって叫ぶ家と同じで、
これほど侵入しやすいところはない。

なにしろ「専守防衛」を謳う国だから、
海岸に上陸するまでは、手出しはしてこない。
当然、戦場は相手国の海岸や都市となるから、
攻める側の国民には被害はない。
さらにさらに、
「戦争をしない国」だとすれば、
全国民は武器など持たず、
完全に服従し、侵略者を出迎えることだろう。
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この状態こそ「日本人は滅びた」と呼ぶ。
前述の生理学者、生態学者、栄養士に
聞いてみたい。
白米や大気汚染、塩分で壊れるか、滅びるか、
さらには、あいまい表現によって壊れるか、
人口圧に圧迫されて滅ぼされるか、
考えるまでもなく、
人口圧によって滅ぼされる可能性のほうが
はるかに高く、しかもその日は早く来る。

これは悲観論ではなく、論理的帰結である。
が、悲観論は、
楽観論に入れ替わることはないにしても、
現実論にはシフトしやすい。
悲しみの末に、
そこから脱出したいから、
もう一度、冷徹に現状を見つめよう、
というときにリアリティを取り戻す。
危機を回避しようという欲求は、
いろいろのアイディアを生み出す。
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アイディアは可能性への筋道になるから、
理念的、いわば理想論に近づく。

「日本は、内部からは壊れない、というか、
自己崩壊はありえないじゃないかな、
なんか、そんな気がしてくるんです」
などと、あいまい表現ではなく、
「日本人の中には、
あいまい表現を多用することから、
意思決定に時間がかかるとか、
意思決定ができないととかいう者の比率が
増えることが予想できる。
が、正確にいうと、コトバの癖はあとから来る」
と言い切ろう。

軟弱な気風が先にあり、
それからあいまいな言語表現の比率が増える。

対策としては、
子どものうちに体育やスポーツになじませ、
できれば人と組み合う運動(格闘、ダンス、手つなぎ、歩行)を
いまよりずっと増やす。
それは動物性を取り戻すため。

そして、仲間との議論の機会を増やし、
かつ、おかしな表現については突っ込むことを許す。
これは人間性の向上を目指すのが目的。
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これだけでも、
日本人が内部から壊れるのを抑止する。
確かに、塩分を減らすよりは手間がかかる。
が、個々人の充足感は増す。

ただし、それより先に、
日本人が滅ぼされる可能性のほうがはるかに大きい。
それをもう1度、言っておこう。
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by rocky-road | 2016-12-04 23:53  

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