私は、見つけました!!!
ロッコム文章・編集塾の遠距離クラスは
2008年9月に開講したが、
この1月26日で18回を迎えた。
3か月に1回のペースで5年がたった。
私が機会あるごとに話しているのは、
文章がうまくなるというのは、
美文調を身につけることではなくて(それを全面否定はしないが)、
最優先すべきは、情報のオリジナリティであり、鮮度である。
「文章力」というとき、国語的表現力を気にする人が多いが、
それ以上にたいせつなのは、オリジナリティや情報の新しさである。
日本語にやや不足があっても、
考え方や話題に趣(おもむき)のある外国人の書く文章のほうが
読み応えがある、ということは少なくない。
日本の大学に留学中の中国人、韓国人の文章を読んだことがあるが
(宿題として提出されたもの)、日本人学生の書いたものよりも
視点がしっかりしていることがしばしばあった。
すぐれた着眼や考え方は、ほかの国のコトバに翻訳しても、
その主意は伝えられるものである。
「文章が苦手」といって逃げていると、
「考え方が平凡」である自分に気がつくチャンスを逃すことになるだろう。
考え方が平凡では、オピニオンリーダーにはなれないし、
社会参加の範囲も限定的にならざるをえない。
そういうことがあるので、
すでに社会の第一線に立つ大人たちには、
自分なりの視点を持ってほしいと思っている。
以前、このブログにも書いたが、
「『いま、私だけが気づいていること』をテーマに、一文を書きなさい。
タイトルをつけてください」という課題も、
みなさんの「発見力」を強化するためである。
18回の遠距離クラスでは、
出題者の期待に応え得る文章が提出されたので以下にあげておこう。
多くの人が手こずったテーマではあったが、
ハードルに引っかからずに飛び越える人もいるのである。
出題した「いま、私だけが……」については、
家族の様子や、自分の体調について述べた人も少なくない。
家庭内のことであれば、自分だけの発見はいくらでもあるだろう。
しかし、「台所の水道の蛇口の具合が悪くなりかかっている」
「母に妙な癖があることを発見した」などでは、
公的な発見とはならない。
結果論ではあるが、口頭でだけではなく、提出用紙にも
「みんなが見聞していることでありながら、私だけが気づいていること」
と書いておいてあげればよかったとは思うが、
ちゃんと答えられる人がいるのだから、
かならずしも出題者の不親切とはいえないだろう。
さて、執筆者・谷口佳津子さんの「私だけが気づいていること」とは……。
「不思議発見
昨年のロンドンオリンピックでは、
多くの感動に心を熱くしたことが蘇ります。
みなさんが感動した場面は、男女どちらのアナウンサーが伝えていましたか?
私はあるとき、女子アナがスポーツ試合の実況中継をしていない不思議に気がつきました。
解説やアシスタントが女性であるのは常ですが、
オリンピック、駅伝、野球、サッカー……、どれも女性アナの中継はありません。
職種選択のほうでは、ジェンダーフリーの状態で、男性看護師や保育士がいて、
その逆に、トラック運転手、工場現場などにも女性がいる近年です。
実況中継なるものが、それほど男女差が出てしまう仕事なのかは疑問です。
もし私が女子アナであったとすれば、できない理由は納得します。
白熱した試合では、声が上ずり、聞きづらくなってしまいそうですし、
御贔屓チームの試合では、冷静なコメントなども到底無理。感動の涙で、
放送トラブルかと間違われるほどの沈黙が起こりそうです。
その程度に身のほどを知る私ですが、
冷静で的確な中継のできる女子アナはかならずいるはずです。
放送業界の無意識の『差別』なのか、はたまた意味のない『ならわし』なのか?
私の不思議発見に対する答えは、どこにあるのでしょう。
季節はフィギュアスケートのシーズン真っ盛り。
男性アナのかなり装飾的で、 オトメチック路線まっしぐらの中継に、
クスリッ!としてしまう私なのです」
(一部、添削。大橋)
放送関係者に一読をすすめたい「発見」ではなかろうか。
by rocky-road | 2013-01-29 00:07